僕らの世界4 (ページ13)

今日:33 hit、昨日:4 hit、合計:2,045 hit

瀬戸太一・2 ページ13

妹は、無事に生まれた。3099gの、大きな妹だ。
妹の手は、小さかった。俺にとっては7回目の体験。航平、美咲、海成、凪沙、明洋、湊。みんな、小さな手だった覚えがある。弟や妹が増えるたびに大喜びしたことを、ふと思い出した。

俺、もっとしっかりしなきゃな…

俺は、瀬戸家の長男失格かもしれないとよく思う。小学生の時は、さんざん暴れ回ってよくケガをした。中学生の時は、まともに勉強もせず、ひたすら野球に明け暮れた。高校生の時は、突然大学に行きたいと言って、親を困惑させた。航平と美咲の中学受験のこともあったのに、親は最後まで受験に付き合ってくれた。そして大学の時。自分が何をしたいのか分からなくなって、大学を辞めた。本当に、申し訳なかったと思っている。でも、そうするしかなかった。もう、どうしようもなかった。そして、大学に通うために引っ越したアパートの近くにある工場に就職した。
俺の人生、グダグダだよな。長男としてダメだよな。
就職してから、そうやって自己嫌悪に陥ることが多くなった。
でも、できることをやるしかない。ちゃんと働いて、少しでも家族の支えになる。弟たちの面倒を見る。健康でいて、これ以上迷惑をかけない。
できることはそれくらいしかないけど、俺にできる精いっぱいのことをしよう。妹の丸い寝顔を見て、俺は密かに決意した。

瀬戸太一・3→←瀬戸太一・1