僕らの世界4 (ページ12)

今日:25 hit、昨日:4 hit、合計:2,037 hit

瀬戸太一・1 ページ12

「兄ちゃんおかえりー」
「おかえりー」
Z021年4月。俺ー瀬戸太一ーは、職場のある大阪から実家に帰って来ていた。もうすぐ妹が生まれると聞いて、仕事を休んで帰ることになった。
「お、長男登場」
家には、親父と弟たちが待っていた。湊や凪沙は、兄ちゃん兄ちゃんと飛びついて喜んだ。いつもは無愛想な美咲も、おかえり、と小さな声で言った。
「あれ？航平は？」
「2階にいる」
俺は、1年前まで何百回、何千回と上り下りした階段を上り、航平を探した。

「航平、いる？」
俺は、部屋を1つ1つノックして確かめて回った。
そして最後に辿り着いたのは、一番奥の俺と航平の部屋。今は航平が1人で使っている。我が家は3人1部屋だけど、俺たちだけは2人で1部屋を分けて使っていた。まさかこんなに子供が増えるとは思っていなかった両親の誤算によるものだろう。

いざドアの前に立つと、ドアを開けるのが躊躇われた。ちょうど1年前までは俺も使っていたのに。
「航平」
意を決して名前を呼んでみても、返事はなかった。
思い切ってドアを開け放つと、勉強机で1人勉強する航平がいた。
「何だ、いるなら返事しろよ」
「…」
航平は、一瞬だけこちらを見ると、また机に視線を戻した。
「航平、元気だったか？」
「…まあね」
「次、2年生だっけ？」
「…そう」
航平は、俺がいなかった1年の間に変わってしまったのか。前はよくなついていたのに、いつの間にか美咲以上に無愛想になっていた。もともと双子だから、今になって性格が似てきたとか。
「兄ちゃん」
「何だ？」
「今、勉強してるから」
つまり、邪魔だから出ていけということか。俺はひとまず部屋から退散した。
ちょっと前まで、「この問題教えてよ」とか言ってたのに。