神童・1 ページ36
「嘘だろ…」
俺ー東海林隼ーは、開いた口が塞がらなかった。
それは、何度見ても「2」という数字だった。数学や理科は確かに「1」、つまり学年1位だ。しかし、文系教科と英語は全て「2」か「3」だ。国語は滅多に1位になれない。それにしても、英語や社会が1番じゃないなんて。
この前のテストは、我ながら上出来だった。事実、得点は460点を超えていた。しかし、返ってきた結果は、学年2位だった。ここ最近はずっと1位だった分、落ちた時のショックはでかかった。同時に、誰が1位なのか気になった。先生は「他人の順位や点を訊くな」っていつも言うけど、それを律儀に守る人はまずいない。結果が出れば他のクラスから来る人、教室を出て他のクラスに行く人でドアの近くが大混雑する。俺も、その中に混じって隣のクラスへダッシュ。
「雄一、お前何点?」
「何だよ急に。437点だよ」
「マジか。じゃあ1位じゃないか、それじゃ」
「おい、何なんだよ!」
俺は、いつも上位に入っていそうなメンバーに総当たりしていった。雄一や神河さん、サッカー部のチームメイト、前はずっと1位だった奴、学級委員にも当たってみた。でも、そのうちの誰でもなかった。一体誰だろう?謎は深まるばかりだ。
翌日、「成績優秀者」が廊下の壁一面に張り出された。でも、人だかりができていて全然見えなかった。
「ショージ、お前も来いよー」
人だかりの中から、雄一の声が聞こえた。雄一は声がでかい上に高いから、すぐに分かる。そして、雄一が叫んだおかげで、道を空けてもらえた。おかげですぐに雄一の所までたどりついた。持つべきものは親友だね!
「俺、TOP5入ったんだ」
第一声から、浮かれたようなドヤ顔だった。
「俺、やっぱ2位か…」
俺の名前が端から数えて2番目にあって、やっぱりちょっとショックだった。
「ついに分かった。1位の奴」
落胆する俺をよそに、雄一は人ごみの中で器用に跳んだりはねたりしている。でも、俺も1位が誰なのか気になって、顔を上げた。
『1位 進藤海斗 480点』
「海斗?!」
俺は、また開いた口が塞がらなくなった。
「マジかよ…」
俺は、海斗に負けた。
確か、俺が最後に海斗に負けたのは小学4年生の冬の算数のテスト。あれ以来ずっと勝ち続け、終いには勝負をすることすらなくなった。
何年振りかの敗北に、悔しいような、嬉しいような、ぐちゃぐちゃの感情が湧いてきた。にやりと笑う、まだ明るかった頃の、今より幼い海斗の顔が思い出された。
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年5月18日 20時