きみが手首に黒ゴムをつける理由 S.Hirano (ページ1)

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( Sho )

きみは手首に黒い髪ゴムをつけていている。

入学式、その細くて少し焼けた肌につけてある黒ゴムを見て僕は不思議に思った。

だって、きみの髪の毛の長さ的には結ぶ必要なんてなかったから。

そのとき僕は女の子のおしゃれってよくわからないと、そう首をかしげた。

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「顔小さいなぁ～
ほんま顔小さい、平野のお肉分けたろか??」

『え……??
いらんよ、平野くんやって顔小さいやん
私が分けたいくらいやで』

僕はその謎に迫るために、きみとの距離を詰めつつある。まあ、きみは心を開いてはくれないんだけどね。

「なんのシャンプー使っとるん??
僕、染めとるから傷んでて…」

『校則的に染めるのはアウトちゃう??笑

なんのジャンプー??薬局で1番安いヤツやと思うで』

きっと僕のことあんまり好きちゃうんやろうな、そう思う瞬間はたまにあるけど、それでもきみは嫌な顔ひとつせず僕のくだらん質問に答えてくれる。

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「れんれんれんれん～」

廉「うわ、来たよこいつ」

「僕先輩やからな??ええねんけどさ」

れんれんなんて呼ばれちゃう(勝手に呼んでるだけ)こいつ、永瀬廉はきみと部活が一緒。

だからわざわざ校舎の違う廉の教室へ行き、近状を聞く。3年棟と2年棟はかなり遠いから、行くのダルいやけどな笑

廉「また中村先輩のこと聞きに来たん??
なんもないって言っとるやん。

……あ、まさか好きなんか??」

「すぐ言う～!!
みんなそう言うやんけど、ちゃうねん。
興味があんねん、黒い髪ゴムに」

廉「あっそ…

あ、でも昨日中村先輩陸部なかで話題になっとったで」

「え!!なんで??」

廉「あんな、中村先輩4年間付き合っとる彼氏がおるんやって。しかもこの学校に」

「……………げっそり」

いま目ん玉が鼻の穴になるかと思った。
それくらい動揺が隠せなかった出来事やった。

“隣のクラスの近藤くんが中村さんのこと好きなんだって～” とか “モテるよね～中村さんって” とかそういうのを聞いたことなかったから、そんなきみに男が!?そういう動揺やで。

廉「まぁ、そんなに落ち込むなって。

まだホントかどうか知らへんから、あんま広めんなよ」

「ズバリ!!
その彼氏は誰なん??」

「それは、知らへんほうがええかも笑」

“じゃ、俺清掃場所行ってくるわ”

ムダに変なところで真面目な廉。
1ミリたりとも役に立たないやん、この生意気野郎が。

なんて心の中で廉に悪態をついた。