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お墓参り ページ39

あっという間に場地くんのお葬式は終わった。




お葬式に来た沢山の人は、場地くんの人徳を物語っているのだろう。



「泣かせたら殴るって言っただろうが」

なんて、凛ちゃんが鼻声で言うから、また私は目を潤ませてしまった。



場地くんが亡くなっても、世の中の流れが変わるわけじゃない。
迫る受験のための塾に講習に、と忙しかった私は場地くんの死を悼む暇なく忙しい日々を過ごしていた。


どんなに泣きたくても、叫びたくても、場地くんが私にくれた夢だから絶対に諦めない。


場地くんがくれたものまで、手放したりはしない。







そう決意して、私はペンを握った。









そして、二月下旬。

全ての受験が終了し、私の志望校合格も発表された。








お墓に続く長い石段を一人、歩いていた。
吐く息が白く染まり、抱えている花と同化する。


そこには何本かの花と、猫の写真。
半分残った状態で凍ったペヤングが供えられていた。



「久しぶり、場地くん。……私ね、第一志望受かったんだ。これで一歩、先生になる夢に近づけたと思う。


ねぇ、知ってる?松野くん、私たちがお互いに好き合ってるって勘違いしてたんだって。
私、吹き出しちゃった。
ヤケに真面目な顔して聞いてくるからさ、びっくりしたんだよねー。



でも、そんときに松野くんに、素直になんなきゃ駄目っすよ、って言われたからさ。



……あのね、場地くん。ずっと、言いたくて、言えてなかったこと、言ってもいいかな?








あの時、私に話しかけてくれてありがとう。


手伝って、ってお願いしてくれてありがとう。


助けて、守ってくれてありがとう。


お祭りに誘ってくれてありがとう。


私の夢を、見つけてくれてありがとう。







私と友達になってくれて、一緒にいてくれて、ありがとう」









そこまで言い終えて立ち上がり、鼻をすすりながらお墓を後にしようとしたその時。





『俺の方こそ、ありがとな』







場地くんの声が、聞こえた気がした。


もちろん、振り向いても誰もいない。









私がお供えした白いダリアが、冬にしては暖かい陽射しに照らされて、ただ、揺れていた。

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碧葉(プロフ) - かのんさん» ありがとうございます!!そう言って頂けてとても嬉しいです! (2021年8月13日 6時) (レス) id: 3b7c38c624 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 見てて楽しかったです!更新頑張ってください!場地さんかこかわすぎ…でした… (2021年8月12日 20時) (レス) id: dda0942623 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:碧葉 | 作成日時:2021年8月12日 17時

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