# 2-2 ページ5
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給湯室の影からこちらを見つめる人影。
＿＿＿＿＿＿＿＿Aだ…
彼女が発する鋭い眼光に、目線を捕まえられる。
すると、彼女は嗤った。
それはもう不気味な程にニンマリと。
綺麗な弧を描くその口元とは裏腹に、
俺の目線を捉えて離さないものがもう一つ。
黒々とした、全く笑らってない、目。
背中に冷たい汗が伝うのが分かる。
照明の位置関係によって逆光に見える彼女の目に、光は差さない。
足が竦んでいく。
大の男が、とある女の視線一つで、
脳が沸騰する程の高い緊張状態に追い込まれていた。
それにこの女は気づいて居ないらしく、続けて驚きのセリフを言い放つ。
「あんな女やめて、あたしにすればいいのに」
驚きで思わずAから視線を外し、女に向き直ってしまう。
「……やめてくれ」
拒否を示す俺の言葉に、
女は本当に不思議でたまらない、という表情で俺の顔を覗き込む。
怖気付く様子は見せず、続けて女は口を開いた。
「ねぇ、どうして私じゃ駄目なんです？」
「やめろ！」
突然出した大声に、女は目を見開いた。
カラーコンタクトのはめられた瞳には、“信じられない！”という色が浮いていた。
「…あいつじゃないと、駄目だからだ」
「……フンッ、呆れた」
絞り出した様な声で俺達の関係に差し障りの無い事を言うと、女は目を細めた後、俺を鼻で笑った。
押し付けていたたわわを離され、絡めていた手も外すと俺の張った肩を ぽんぽんっ と、二回叩く。
そして、給湯室とは逆方向のオフィスへと戻って行った。
女が去り、恐る恐る給湯室の方に視線を戻す。
おそらくコーヒーが淹れられているであろう、
マイマグカップを握った彼女は今度は身体の半分くらいを壁際から出し、
首を傾げてこっちを見ていた。
そして、口を歪めてこう言う。
『多寡が噂、されど噂です。
兄者さん＿＿＿＿＿＿＿＿＿』
お前は知っている。
俺が他の女なんかの虜になんてならない事を。
お前は知っている。
俺はお前の元から離れられない、虜だという事を。
お前は知っている。
俺が狂おしい程に、お前を愛している事を。
俺は知らない。
俺がお前の何番目の男なのかなんて。
俺は知らない、
______知りたくない。
__________
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あずきいろ
ラッキーアルファベット
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作者名：ROT | 作成日時：2017年11月30日 23時
