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★
「…なんか言えよ。…恥ずかしーじゃん 」
シャツ１枚で真っ赤な鼻をすすりながら悪態をついて
声がちいさいのは近づいてもいいサインだと思わせた。
引力に逆らえなくなって、小指がぶつかりそうになって
こんな些細な熱さえ合図になって、”今だ”と鳴くのだ。
「 やぶ、帰らないでっ 」
「 わっ、…………お前、酔っ払ってんの？」
広い背中に飛び乗って、よろけ、やぶの匂いを嗅いだ。
誰かにおんぶをしてもらうなんて子供のとき以来だし
おれ達は酔ったフリができる歳になってしまっていた。
こうやって世界中を騙して、ふたりでこっそり笑おうか。
おれはただの酔っ払いじゃない。ただの恋人なのにって。
「 やぶ、帰らないで〜っ！」
「……あー、はいはい 」
素直に足をバタバタさせてねだると気持ちがよかったし
見上げた星空がぐーんと広がっていくような気さえした。
この背中も、優しさも、これからふたりで過ごす時間も
あの時、走り出さなけば知らないままだったのだと思うと
鳥肌が立ちそうなほど怖くて、ひどく愛おしい。
アレ買って、コレ買って、出させて、帰らないで、ー
「…やぶ、帰らな、………… 」
”な”のカタチをした唇を丸ごと包み込むようなキスが
一瞬でおれを、世界一幸せな恋人へと変えてしまう。
ただの世界一幸せな恋人になったおれは
誰ひとり、目の前のキミさえ、騙せなくなる。
ずり下がっていた体を、ゆさり、とおぶり直して
やぶは立ち止まる前よりも歩くスピードを上げた。
「 今のはうるさいのを黙らせただけだからなっ…」
大好きな人の長い睫毛は風も無いのに揺れていて
動揺したのか間違って下宿を通り過ぎてしまった。
ー そういえば、この先には何があったっけ。
やぶはそこら辺の俳優よりずーっとかっこいいけれど、
演技ができないからスクリーンデビューはむずかしい。
だから、まずそうに顔を歪ませて「美味い」って言ってよ。
ーーーーーーーーーーーーーー ワンモア・リフレイン ーー
終わり
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ななみん(プロフ) - ありがとうございます！さっそく読もうと思います(*^-^) (2017年2月19日 14時) (
レス) id: 5e617ef865 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ななみんさん» ななみんさん、ありがとうございます^^まず薮sideの「ねぇ、全部ちょうだい」を最初から読んで頂くのがいいかと思います。あとは、ひかるくんの女友達sideと短編集があるのですが、こちらは時系列がバラバラなので、気が向いたときに好きな順番で読んで頂けます(u_u) (2017年2月19日 10時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
ななみん(プロフ) - しょこるさんこんにちは！ねぇ、シリーズ今から読み始めようと思うんですが、どれから読むのがおすすめでしょうか？ (2017年2月19日 7時) (レス) id: 5e617ef865 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 夏樹さん» いつも心のこもった感想ありがとうございます＊文章だけを読んでそれほど感情移入し、号泣までできるというのは、きっと夏樹さんが素直な心の持ち主だからですね…（ ; ; ）とにかく嬉しいです。今後もゆっくり更新ですが、よろしくお願いします＊ (2017年2月17日 0時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
夏樹(プロフ) - こんにちは。光side本当に切なくて大好きです。このクリスマスのお話で大号泣、更には解説みたいな話の内容を読んだら感情移入をしすぎてしまい歯止めがきかずまたも大号泣をしました。しょこるさんの書き方、話の内容大好きです。これからも応援してます。 (2017年2月12日 7時) (レス) id: d278d89ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2016年12月29日 22時
