15. ページ17
…
「これダメ」
「あっ、だめっ、やぶ…っ、あぁっ!!」
ひかるが咥えていたスプーンを抜き取って、自分の口に
突っ込んだ。
蓋を奪われた唇は喘ぎ声を一気に吐き出して、ひかるは
まるで吹っ切れたようだ。
「っ、はぁっ……ねぇやぶ……下も触って?」
「下ってどこ?ちゃんと言えよ」
スプーンを適当に吐き出したら、床に落っこちて派手な
金属音がした。こんな真夜中に、誰かに気づかれたらと
思うと変にゾクゾクしてしまう。
ひかるが「おれの」「おれの」と、何度も同じところで
巻き戻すから、ありったけの低い声で「おれの何?」と
熟れ落ちそうな耳に問い詰めた。
「おれの……お…っ…ち……
っ、やっぱり無理…っ!」
逃げようとしたひかるを、強引に抱きすくめて膝の上に
戻した。「どこか言ってみろって」「言えたらいっぱい
触ってやるから」と、我ながらしつこく意地悪を言った。
恥ずかしがったり、嫌がるひかるは、まじできりがない。
「……ここ触って…っ?」
ひかるの利き手が俺の利き手を捕まえた。
そのまま俺の手を自分の下半身に押しつけ、ぐにぐにと
上下に擦りはじめる。
5年前の夏とおんなじ風に。
ホースで水をかけあった放課後、ひかるの部屋へ行った。
窓に干した制服、いい匂いのタオル、ベッドに当たった
膝裏の痛み__手のひらの感触に、すべて支配された日。
「は、…んっ…気持ちい…っ」
あの日はティラミスなんか無かった。夏のうだるような
暑さしかなかった。
それでも、あの日のまだ幼いひかると、今腕の中で喜ぶ
ひかるがぴったり、と重なる。
特別なクスリを盛られているのは、俺なのかもしれない。
俺は、あの日からそれに、今も、これからも__。
あぁでもない、こぉでもないと、ゴタクを並べていると
動かしていた手がだんだんゆっくりになって、はたりと
止まった。
「やぶ、なんでしてくれないの…?」
ひかるは「気が乗らない?」と、泣きそうな声で言った。
俺は「まだ食べてる途中だろ?」と、説教じみたことを
言った。
「これ食べてからベッドでゆっくりやりゃいーじゃん」
「……残りは明日じゃだめ?」
ひかるはぺろっ、と1日に何個もケーキを食べる奴だし
俺が贈ったものを食べ残すとか、なんていうか、ひかる
らしくない。
「もう普通のおれじゃつまんないの…っ?」
ひかるの切羽詰まった物言いに、背中がひゅっ、ーと
縮み上がった。
落ちたスプーンをキッ、と睨んだ涙目、膝で握った拳。
柔らかくて感じやすい部分をつつかれて、確かに痛い。
…
191人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつな - 初めまして。いつも拝見させて頂いております。ひかるくんが可愛すぎて撃沈しました。何度読ませて頂いても、美しい世界にうっとりします。大好きです。これからも応援しております!! (2021年6月27日 0時) (携帯から) (レス) id: f6711a1d35 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ころねさん» やぶひかちゃんの可愛さに癒されてもらえて何よりです*本編も可愛く切なく書いていきます*^^* (2020年1月30日 15時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» そういう切ない一面もありますよね…(; ;)けど、この頃にはふたりが薄っすら同じ未来を見始めているというか、ひかるくんもいい意味でふたりの終わりを見失っているのかなと、、結局ずーっと一緒にいちゃったねって言えますように*その辺りも本編で* (2020年1月30日 15時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - hiさん» お久しぶりです(´ω`)コメント嬉しいです*互いに振り回されたり振り回したり、それで結局愛を再確認したりして、ズブズブ抜け出せないふたりなのかな、と。ここまできたら微笑ましいです…(´ω`) (2020年1月30日 15時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - やぶひかちゃんかわいすぎました!本編も楽しみにしてます! (2020年1月25日 12時) (レス) id: cee1da3861 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しょこる | 作成日時:2019年8月24日 22時