☆ ページ43
…
昼の真っ白な陽の光と夕焼けのオレンジが、ちょうど
半分ずつ混ざっている。
裸の並木から伸びる痩せた影を踏みながら歩く帰り道。
きっと、でも、きっと、と、思考がループする。
家の前についても、革靴に縫いつけられたままの顔を
上げさせたのは、ブルーノのワフワフ、と嬉しそうな
鳴き声だった。
「わかったわかった…っ、おれも寂しかったってっ」
芝生の上でブルーノにもみくちゃにされたセンセイが
歯をこぼして笑っている。
まるで絵画みたいな光景にドキドキしながら隣に腰を
おろし、行き場のない利き手でブルーノの頭を撫でた。
「でっかくなったでしょ」
「……うん」
「性格もすっかり丸くなってさ」
「……うん」
トゲのない甘やかな返事につい気が緩んでセンセイを
見ると、磁石みたいにぴったり、と視線がくっついて
顔に熱が集まった。
「いや、俺じゃなくてブルーノの話、っ…」
「え、あ、、そっか……」
チョウチョでもいたのだろうか。
俺の手を離れブルーノが庭を駆けていく。町は天国に
旅立った"母"を弔うようにとても静かだ。
「……ん"、」
どんなちいさな嘘も許されない静寂の中で、咳払いを
ひとつ落とした。
ふたりの曖昧な関係に句読点を打ち、まっさらな次の
ページを開きたいから。
「俺、センセイに、、
ずっと言いたかったことがあるんだ」
＿＿ずっと。
口にした言葉にからだがのっとられていくのを感じて
少し寒気がする。
センセイが「なにを？」と、平気な顔で言ってのけて
やっぱり、池に突き落としてやればよかったと思った。
そして、今度こそ、俺にもあとを追わせてほしい、と。
「……嘘つき、」
ぽすん、と音を立てて、センセイの二の腕をなぐった。
これは、屋根裏で打ち明け話をごまかした、あの時の
ぶん。
「っ、嘘つき…」
これは、校長室で「金を渡した」と言った、あの時の
ぶん。
「……薄情者…っ…」
これは、黙って宮城に帰ってしまった、あの時のぶん。
「自分勝手、くそ真面目、頑固…っ…
裏切者、あほ…バカ…っ…」
カーテンみたいに手応えのない身体を、すがるように
揺さぶる。
会いたかった。ほんとはずっと、それだけだった。
卒業式の朝みたイワシ雲、ゴリラそっくりな大学教授
文化祭で食べた苺飴の味、子供達のいたずら話も全部、
センセイに聞いてほしかったのに。
「 大っ嫌いだよッ…！！」
これは、出会ってしまった、
あの時のぶん。
☆最終回☆
こんなときこそ、笑っていたいよ
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しょこる(プロフ) - きょーかさん» 連載中も素敵なコメント頂けて、楽しく書き切ることができました(*^^*)ありがとうございます＊たまにはやぶくんとセンセイに会いに来てくださいね。よかったら他のお話や次回作もよろしくお願いします☆彡 (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ちちちさん» 最後までお付き合い下さり、ありがとうございます☆キラキラした気持ちをお届けできて嬉しいです＊私もセンセイには掴み切れないふんわりパステルピンク。そんなイメージを持っております*^^* (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - Yokoさん» いつも身に余るお言葉ありがとうございます＊ナチュラルに何年も我慢してきたやぶくんですからね、、そりゃもう朝から昼からオオカミでしょう笑★もちろんセンセイも満更じゃないです(//-//) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» タキシード仮面…！！★世代的にもキュンキュンしてしまう喩えをありがとうございます(*^▽^)/ ややこしいことに巻き込まれまくってきたセンセイが、いよいよ幸せになる番です＊ (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - みるみるみるきーさん» 長らくお待たせいたしました…(´ω`)ひと夏の経験で終わってもおかしくない恋でしたが、何年かかっても終わらない途切れない、それがこの２人です。これから可愛いお家で恋人を楽しむことでしょう〜(*^-^*) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年3月14日 22時
