美少女戦士センセイ＜yb×hk＞

☆ ページ39

…





心を守ろうとする防衛本能が無理に明るい声を
出させた。いつも通りの足取り、いつも通りの
減らず口で、「お菓子が見つからなくて」って
子供を諭すような声を期待していた。

どうやら神様は、俺に好かれる気はないらしい。





「おい、どうしたッ、！？」





床にうずくまるMomにかけ寄った。
ぐったり胸をおさえ、灰色がかった唇を動かし
私はいいから行って、大丈夫だからと、うわ言
みたいに繰り返している。






「っ、行けるわけないだろっ、！
しっかりしろよッ！！」





俺が、センセイの大切な人を死なせてしまう？





「すぐ救急車くるから……もう大丈夫……」





骨ばった背中をさすりながら思った。ほんとは、
俺じゃダメだって思うこと、何度もあったって。


俺はセンセイみたいに繊細じゃないし、優しく
ないし、可愛げもないし、料理だってできない。


でも、ふたりを離れ離れにさせてしまったのは
俺だから。せめて、一緒にいさせてほしかった。

これ以上遠くに行かせたら、あわせる顔がない。





「…大丈夫だから…っ…」





緊急手術は数時間に及んだものの、
発見の早さが功を奏したらしく、無事成功した。

翌朝には身寄りのないMomの着替えを運んだり、
担当医の話を聞いたり、意識のはっきりしない
Momに声をかけたりとあわただしくて、時間は
指の隙間からとめどなく流れていった。

後悔はしていない。ただ、なんでって思うだけ。





「……ん、……暗(くら)、……」





病室は青い夜空に取り込まれて、ずいぶん暗い。
窓から差す夕焼けに染まったベッドの脇で、
Momに子守唄を歌っているうちに自分も眠って
しまったらしい。


日本では、「ねむれねむれ」ではじまる子守唄。
原文は「Slumber, slumber, O my darling baby.」

夜更かしする俺を茶化すとき、Momが歌ってた。





「……ん？」





身に覚えのない重みを感じて、右肩に触れる。

肩にかけられていたらしいチャコールグレーの
カーディガンに目を凝らし、
もしかしたら、と、心臓どころか、内臓という
内臓が噂話を始めてうるさい。



あの頃とおんなじ、香水の匂い＿＿。



ひっそりと病室を出て、足音に気をつけながら
ナースセンターへ向かうも、歩みがどんどんと
はやまった。

最後の角を曲がる頃には、ほとんど走っていて
314号室の薮です、と言いながら角を曲がった。





「起きたら肩にこれっ、、誰のかわかりますか？」





…

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