☆ ページ25
…
「思い出させて、ごめん」
言葉じゃ足りない気がして、繋いだ手を握りなおした。
センセイは俺の肩に頬を擦りつけるように、ちいさく
首を振って、
たまには思い出してあげなきゃ、忘れちゃうから、と
空いた手を腕に絡めた。
「教師っていう服も、男っていう服も
ちゃんと着て生きていかなくちゃ」
教壇に立つセンセイの排他的な表情が浮かんで消える。
センセイは殻に閉じこもっていたんじゃなくて、
"着ぶくれ" していただけなんだって、やっとわかった。
そりゃ、息苦しいよ。可哀想だよ。
「そんなの脱いじゃえば？」
なるたけ優しく、センセイのからだを窓に押しつけて
シャツの襟をめくるフリをした。
センセイが全部脱ぎ去って、何者でもない唯のひとに
なっても、変わらず、好きでいる自信があると思った。
白昼堂々と、下の名前で呼べるから、好都合だとさえ。
「無理だよ。……だから上から着るの」
センセイは壁にかかったコスチュームを、ちらり、と
見て言った。あの日、旧校舎のあの部屋で、机の下に
隠れていたセンセイを見つけた時の、ウサギの衣装だ。
「戦うために？」
「……そ、」
センセイは慈しむように目を細めて、
俺の顔をまるで卵にするみたいに大切に包んで言った。
昔の思い出に負けそうになったら、今でも口にするよ。
" ちんくるほい "
センセイが囁くように呪文を唱える。
ツンと上を向いた可愛い唇に、俺は魔法にかけられて
俺には特別な力があるんだ、と、信じきってしまった。
全部、忘れさせてあげられるのは、俺しかいないって。
それが、俺の役目。
「今日は戦わなくていいから……
俺のために着てよ」
おでこをあわせて、見つめ合う。
ふたりの息とか、ふたりの熱で、センセイのメガネが
ぼんやり曇って、自然と唇に視線がおちた。
センセイはぽろぽろって、歯がこぼれるみたいに笑う。
「 着たら脱がしてくれる？」
キスをした。たくさんした。
センセイを守りたい。センセイを救いたい。嫌なこと
全部、忘れさせてあげたい。
「ん…っ、」
センセイの過去を知って、痛みに触れて、センセイを
ますます好きになってしまった。
センセイは完璧じゃないから、俺にとって完璧なのだ。
空っぽだった俺に役目をくれた。
「あっ、、やぶく、ん」
「センセ…」
出窓にもたれ、何度も唇を吸う。十字架が金色に光る。
俺はなにも祈らないし、なにも許してなんかいらない。
センセイが、俺の神様だった。
☆次回☆
ほんとの自分に着替えなくっちゃ
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しょこる(プロフ) - きょーかさん» 連載中も素敵なコメント頂けて、楽しく書き切ることができました(*^^*)ありがとうございます＊たまにはやぶくんとセンセイに会いに来てくださいね。よかったら他のお話や次回作もよろしくお願いします☆彡 (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ちちちさん» 最後までお付き合い下さり、ありがとうございます☆キラキラした気持ちをお届けできて嬉しいです＊私もセンセイには掴み切れないふんわりパステルピンク。そんなイメージを持っております*^^* (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - Yokoさん» いつも身に余るお言葉ありがとうございます＊ナチュラルに何年も我慢してきたやぶくんですからね、、そりゃもう朝から昼からオオカミでしょう笑★もちろんセンセイも満更じゃないです(//-//) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» タキシード仮面…！！★世代的にもキュンキュンしてしまう喩えをありがとうございます(*^▽^)/ ややこしいことに巻き込まれまくってきたセンセイが、いよいよ幸せになる番です＊ (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - みるみるみるきーさん» 長らくお待たせいたしました…(´ω`)ひと夏の経験で終わってもおかしくない恋でしたが、何年かかっても終わらない途切れない、それがこの２人です。これから可愛いお家で恋人を楽しむことでしょう〜(*^-^*) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年3月14日 22時
