☆第８話：最後の砦、金色のクロスに賭けて ページ23
…
そんなはずはない、と、もう一度メモを開いた。
アスファルトの１本道は車が楽にすれ違える程
十分に広くて、両側に外国風の家がずらり、と
並んでいる。見慣れない植木と、嗅ぎなれない
匂い。赤ちゃんの手の平みたいな形の落ち葉を
踏みながら歩いた。
しわしわになったメモを何度読み返してみても
この庭付きの一戸建てがセンセイの家だという。
クリーム色の壁、玄関前の小さな階段、ウロコ
屋根にはカッターで切って指でめくったような
出窓がある。俺は半信半疑で木製の柵を開けて
シャリシャリした芝生に足を踏み入れた。
「うわ、っ…！」
突然じゃれついてきた大型犬に尻もちをついた。
たぶんゴールデンなんとかってやつがボフボフ、
顔じゅうを舐めてくる。
「こら、ブルーノっ！」
もうほとんど押し倒されて仰向けになったまま
小麦色の毛並みの向こうに、待ち焦がれた笑顔。
センセイはいつものメガネに休日らしいラフな
格好をしている。
「うちの子がごめんね」
センセイがすぐそばにしゃがんで、親指で俺の
頬を拭う。優しい声で「ちょっと焼けたね」と
言って、「飲み物なかったから」とスーパーの
袋を持ち上げて見せた。
「ここがセンセイのウチ…？」
「そ、暑いから入ろっ」
センセイがココア色のドアを開けて、どうぞと
手招きをした。ケツの芝を払って玄関をくぐる。
キッチン、大きなオーブン、木のテーブルに花。
おばあさんが１人、裁縫をしていた。
「Hi, Mom.(ただいま)」
「You look happy, HIKARU.(おかえり)」
瞳が青くて、からだが大きい。
金色混じりの茶髪を後ろにひっつめて、まるく
まとめている。
センセイはお盆にガラスのコップと紙パックの
ジュースを乗せる間、おばあさんは俺のことを
食い入るように見つめた。
「やぶくん、こっち」
「…………」
センセイは階段を上がっていく。おばあさんの
視線をプツン、と切るように短いお辞儀をして
あとを追った。
「As you said, cute boy.(聞いてた通り可愛い子ね)」
「Zip your lips.(うるさい)」
「え、今なんて言ったの？」
「……ブルーノに餌をあげて、って」
「へぇ、」
２階は広いリビングだった。センセイは深緑の
ソファを横目に部屋の角まで行って立ち止まり、
「Lはリビング、Kはキッチン……じゃあGは？」
そう言って振り返った。
「やぶくん、目を瞑って？」
「え……」
強引に渡されたお盆を、傾けないように抱えて
言われた通り目を瞑る。金属が擦れる音がした。
「Gは "グルニエ"。屋根裏のことだよ」
…
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しょこる(プロフ) - きょーかさん» 連載中も素敵なコメント頂けて、楽しく書き切ることができました(*^^*)ありがとうございます＊たまにはやぶくんとセンセイに会いに来てくださいね。よかったら他のお話や次回作もよろしくお願いします☆彡 (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ちちちさん» 最後までお付き合い下さり、ありがとうございます☆キラキラした気持ちをお届けできて嬉しいです＊私もセンセイには掴み切れないふんわりパステルピンク。そんなイメージを持っております*^^* (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - Yokoさん» いつも身に余るお言葉ありがとうございます＊ナチュラルに何年も我慢してきたやぶくんですからね、、そりゃもう朝から昼からオオカミでしょう笑★もちろんセンセイも満更じゃないです(//-//) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» タキシード仮面…！！★世代的にもキュンキュンしてしまう喩えをありがとうございます(*^▽^)/ ややこしいことに巻き込まれまくってきたセンセイが、いよいよ幸せになる番です＊ (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - みるみるみるきーさん» 長らくお待たせいたしました…(´ω`)ひと夏の経験で終わってもおかしくない恋でしたが、何年かかっても終わらない途切れない、それがこの２人です。これから可愛いお家で恋人を楽しむことでしょう〜(*^-^*) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年3月14日 22時
