☆第６話：永遠の７月が、僕らを閉じ込める ページ17
…
野球部がヒットを打った。
全開にした窓の向こうでカキン、ーと気持ちいい音が
鳴って、そのあと白い球が水色の空をふたつに割った。
この部屋は静かだ。
「センセイ暑くねぇの…？」
「暑いよ。溶けそう」
センセイは涼しい顔でノートに何か書きながら言った。
ちっとも効かないクーラー、汗が噴き出す。
センセイが「去年からこうだよ」って言うから、
睨みつけてやった。
もちろん、センセイじゃなくて、クーラーの方を、だ。
「もぉ無理限界、、帰ろっかな」
センセイがちらっと、俺のことを見た。氷がじんわり、
溶けていくみたいで、センセイの汗は少しも汚くない。
「別にいいよ帰っても」
「……冗談じゃんか、」
センセイはもう一度、別にいいよと唇をとんがらせて
ちょっと傷ついたけど、と、拗ねた声で言ってのける。
夏は、むずかしいことが考えられない季節だ。
短くて単純なことなら間に合うけれど、難しいことは
答えが出る前にこの熱気で蒸発してしまう。考えても
蒸発、考えては蒸発＿＿。
ねぇ、センセイ。俺のこと好き？
「暑いと時間が経つのが遅く感じない？」
センセイが唐突に言って、うつむけた顔をあげさせた。
そりゃそうでしょ、だから？と、気のない返事をして
意図の見えない会話をとりあえず繋げる。
「それはちょっと嬉しいかなーって」
おれはね、と、センセイは肩をすくめ、照れたように
はにかんだ。アツアツの頭をぐるぐるさせて、やっと
意味がわかって、胸の真ん中が痛くなる。
俺も、センセイと一緒にいる時間はあっという間だよ。
センセイが好きだから。
「センセイっ…」
ガゴンガゴン、と椅子ごと隣に移動して、からだごと
まっすぐ向き合う。心も視線も言葉もまっすぐがいい。
あの白球みたいに。
「おれ、センセイが好きだよ。
センセイは俺のこと好き？」
センセイは斜め下に視線を逸らした。さっきとは違う
角度で胸が痛くなる。
「……好きじゃない？」
センセイがふるふる、と首を横に振って、長い前髪が
いろんな方向に散らばった。はやく、整えてあげたい。
「……じゃあ、好き？」
センセイは何も言わない。
「もしかして……教師と生徒だから？」
たっぷり数秒待たせて、センセイはやっぱり首をふる。
それから、ほんわり、口を開いた。
「……好きとか、、恥ずかしい…」
センセイは水笛みたいにふるえた声でそれだけ言って
手の甲で口元を隠した。
隠しきれないセンセイの気持ちが、俺の心をじんわり
痺れさせていく。
…
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しょこる(プロフ) - きょーかさん» 連載中も素敵なコメント頂けて、楽しく書き切ることができました(*^^*)ありがとうございます＊たまにはやぶくんとセンセイに会いに来てくださいね。よかったら他のお話や次回作もよろしくお願いします☆彡 (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ちちちさん» 最後までお付き合い下さり、ありがとうございます☆キラキラした気持ちをお届けできて嬉しいです＊私もセンセイには掴み切れないふんわりパステルピンク。そんなイメージを持っております*^^* (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - Yokoさん» いつも身に余るお言葉ありがとうございます＊ナチュラルに何年も我慢してきたやぶくんですからね、、そりゃもう朝から昼からオオカミでしょう笑★もちろんセンセイも満更じゃないです(//-//) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» タキシード仮面…！！★世代的にもキュンキュンしてしまう喩えをありがとうございます(*^▽^)/ ややこしいことに巻き込まれまくってきたセンセイが、いよいよ幸せになる番です＊ (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - みるみるみるきーさん» 長らくお待たせいたしました…(´ω`)ひと夏の経験で終わってもおかしくない恋でしたが、何年かかっても終わらない途切れない、それがこの２人です。これから可愛いお家で恋人を楽しむことでしょう〜(*^-^*) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年3月14日 22時
