☆ ページ15
…
「……なんのつもり？」
「ん〜？退屈だなぁ〜と思って」
退屈、という言い訳になつかしさすら覚えて、戻ってきた
という感じがした。期待することを忘れた、安全な世界だ。
首に腕が回って、顔が近づいていく。このまま投げやりな
キスをすれば、楽になれるのかもしれない。
“……やぶくん、”
センセイが俺にくれた気持ちは花みたいに完成されたもの
ではなく、吹けば飛んでしまうような小さい種だったのだ。
だから、まだ間に合う。引き返せる。なかったことに＿＿、
“……やぶくん、”
これから大事に、大事に、育てていくつもりだったのに＿＿。
センセイは、そうじゃなかったの？
「やっぱお前じゃダメだッ…」
「は？ちょっと……薮っ！！」
センセイは、期待させるのが上手すぎるんだよ。
「"お前ら" じゃダメなんだよッ…！！」
そう叫んだ時、俺は笑っていた。心の向くまま旧校舎へ走り
はち切れそうな腕を漕いで、喉で息を吸い込み、空っぽかも
しれない部屋の錆びたドアを迷わずこじ開ける。
窓から差し込む逆光のなかで、切り絵みたいなシルエットに
息をのんだ。
「……廊下は走らない」
ガゴン、と向かいの椅子に座って、ふさわしい言葉を探す。
からだの隅々まで探したせいで、胃の中にあるコロッケと
パン(昼に食べた)まで感じ分けられそうだった。
センセイがメガネを置く気配がして、現実にひき戻される。
センセイはたてつけの悪そうな引き出しを柔らかくひいて、
真っ白なアルバムを取り出し、埃を払うフリをした。
「こないだの写真、できたよ」
プラスチックのアルバムは見開きに４枚写真が収納できる
作りで、最後までぎっしり写真が詰まっているようだった。
「……見ていいの？」
センセイはこっくり、と頷いて、まるで緊張をほどくように
ズズズ、とお茶を啜った。
ページをめくりたくて
拮抗して胸がぐるぐるする。
センセイの笑顔、センセイのピース、センセイの健康的な歯、
センセイの蒼い瞳＿＿。
清潔なシーツに横たわり、こっちを見据えているセンセイの
宇宙みたいな瞳に捕われ、指がおののき、固まってしまった。
儚くて、物欲しそうな瞳に、吸い込まれそうで。
「ゆーともね、その
…
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しょこる(プロフ) - きょーかさん» 連載中も素敵なコメント頂けて、楽しく書き切ることができました(*^^*)ありがとうございます＊たまにはやぶくんとセンセイに会いに来てくださいね。よかったら他のお話や次回作もよろしくお願いします☆彡 (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ちちちさん» 最後までお付き合い下さり、ありがとうございます☆キラキラした気持ちをお届けできて嬉しいです＊私もセンセイには掴み切れないふんわりパステルピンク。そんなイメージを持っております*^^* (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - Yokoさん» いつも身に余るお言葉ありがとうございます＊ナチュラルに何年も我慢してきたやぶくんですからね、、そりゃもう朝から昼からオオカミでしょう笑★もちろんセンセイも満更じゃないです(//-//) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» タキシード仮面…！！★世代的にもキュンキュンしてしまう喩えをありがとうございます(*^▽^)/ ややこしいことに巻き込まれまくってきたセンセイが、いよいよ幸せになる番です＊ (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - みるみるみるきーさん» 長らくお待たせいたしました…(´ω`)ひと夏の経験で終わってもおかしくない恋でしたが、何年かかっても終わらない途切れない、それがこの２人です。これから可愛いお家で恋人を楽しむことでしょう〜(*^-^*) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年3月14日 22時
