☆第４話：シャッターの音に、試される運命 ページ11
…
なんてことない初夏の晴れやかな午後が、脹らんでいく。
俺の中で「こわいくらいの静寂に包まれていた」ことに
なり、あとから思い出した時には「息をのむほど美しい
午後だった」と、うっとり、懐かしむことになるだろう。
センセイと、二度目のキスをしたのだ。
「もっかい、いい？」
センセイはこくり、と頷いて、自分のシャツの裾を握った。
衣替えのために布地を減らされた俺の半袖シャツと違って
センセイのシャツはセンセイの意思によって薄く向こうが
透けていくもんだから目に毒だった。
センセイは東北出身だから、暑さにはめっぽう弱いと言う。
「………ン、…」
メガネにぶつからないよう顔をかたむけて、唇をとらえる。
あまり長いキスができないのは、センセイがぐっ、と息を
止めてしまうからで、窒息したら可哀想だと思ったからだ。
俺も一緒に息を止めて、苦しくなったら離す。
「センセイもっかい…」
薄いシャツ越しに両肩に置いた手のひらに力を込めたとき
おんぼろチャイムが「走れ」と唸った。
「やべぇ次数学だッ！！センセイまた後でねっ」
余った椅子を飛び越え、廊下に出て、ぶんぶん手を振ると
センセイも俺の10分の１ほどのサイズで振り返してくれた。
誰もいない廊下を、腕を漕いで走る。
「廊下は走らない」
「……サーセン」
数学の教師は熊とフレディ・マーキュリーと足して、二で
割ったような見た目をしている。
こいつに「授業をサボって “どこに”行ってるんだ？」と
問い詰められた時、センセイと過ごした思い出をほじくり
返されるぐらいなら、更生したふりをして授業に出る方が
マシだと思い、結果的に、センセイと会える時間は格段に
減ってしまった。
俺は授業と授業のあいだ、たった10分の休憩時間に廊下を
走って往復している。
「これからテストもあるし、、放課後残って仕事するかも」
「まじでっ、じゃあ俺もっ…！」
やぶくんもテスト作ってくれるの？、と、おもしろそうに
センセイが笑ったのは、今日の朝のことだ。
俺はこうして、苦手じゃないけど好きにはなれない数学を
思い出にふけってやり過ごす。
口から入ってくるお茶の匂いや、窓から差し込む光の角度、
キスしたあとの何か言いたげな、センセイの伏し目を＿＿。
何か言いたげな。
「センセイっ…………あれ、電話中？」
「んーんっ」
待ちわびた放課後、はじけ飛びそうな両腕を漕いで走った。
薄暗い部屋に光った液晶をセンセイがあわててポケットに
押し込むのを見て、ガゴンガゴン、椅子を寄せて隣に座る。
…
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しょこる(プロフ) - きょーかさん» 連載中も素敵なコメント頂けて、楽しく書き切ることができました(*^^*)ありがとうございます＊たまにはやぶくんとセンセイに会いに来てくださいね。よかったら他のお話や次回作もよろしくお願いします☆彡 (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - ちちちさん» 最後までお付き合い下さり、ありがとうございます☆キラキラした気持ちをお届けできて嬉しいです＊私もセンセイには掴み切れないふんわりパステルピンク。そんなイメージを持っております*^^* (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - Yokoさん» いつも身に余るお言葉ありがとうございます＊ナチュラルに何年も我慢してきたやぶくんですからね、、そりゃもう朝から昼からオオカミでしょう笑★もちろんセンセイも満更じゃないです(//-//) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» タキシード仮面…！！★世代的にもキュンキュンしてしまう喩えをありがとうございます(*^▽^)/ ややこしいことに巻き込まれまくってきたセンセイが、いよいよ幸せになる番です＊ (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - みるみるみるきーさん» 長らくお待たせいたしました…(´ω`)ひと夏の経験で終わってもおかしくない恋でしたが、何年かかっても終わらない途切れない、それがこの２人です。これから可愛いお家で恋人を楽しむことでしょう〜(*^-^*) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年3月14日 22時
