美少女戦士センセイ＜yb×hk＞

☆ ページ2

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センセイは不感症だ。



ホームルームの時間ぴったりに戻ってきた担任は
歯抜けの教室を見てポップコーンみたいに慌てた。
クラスのみんなも、ようやく血が通ったようだと
安心してざわつき始める。





"また４月に"





センセイは毎日教師らしい綺麗めな服を着ている。
教科書に載っている通り、ＴＰＯをわきまえろと、
陶器みたいな瞳で。

生徒は制服を着なさい。生徒という服も着なさい。
センセイは何も間違っちゃいない。



「あっ、いたいた」



帰り際、階段の踊り場でさっきの女子に捕まった。
嬉しくもないのに、笑ってしまう。これも持病だ。



「久しぶり。……犬は元気？」
「犬？」



ミニスカートは風もないのに揺れる。

こっちこっち、と腕を引かれた先は旧校舎だった。
廊下の境目はパッチワークで繋ぎとめたみたいに
色が変わっている。



「ここいいでしょ？」



ウナギの寝床と呼ぶべき、細長くてカビ臭い部屋。

左右を本棚に挟まれ、急いで食べたトウモロコシ
みたいに点々と本や小物が置き去りにされている。

他には、窓の近くに事務机がひとつだけ。
職員室でよく見るやつと違って、こっちは木製だ。



「だぁれも来ないし。ほら、鍵もかかるしっ」



使われなくなった部屋に自分を重ねて、居心地の
良さに反吐が出そうになった。
ここは学校の死んだ細胞。捨てることのできない
からだの一部。



「ほら、私って教室だと集中できないじゃん？」
「……知らねぇよ、、」



ミニスカートは "お行儀よく"机の上に飛び乗って
ぶらぶら足を漕いだ。靴の先が当たってズボンに
埃の跡がつく。とっとと帰って漫画でも読みたい。

今は気分じゃないわ、と、また発作みたいに笑う。





「…つまんないのっ、」





出て行く後ろ姿には目もくれず、窓辺に近づいた。
お前に言われなくても、この世界はつまらないし、
俺もつまらない、と。

俺は退屈と妥協に冒された、この世界の癌だから。



さっさと学校(ここ)を出て歯車になりたいって
そんなことばっか考えている。



誰もがこぞって「悪くない」と歌う歯車の１つに。
親父や母さん、コンビニ店員や、先生達みたいに。

一体、何を動かしているのか、分かりもしないで。



空は鏡のように明るい、でも、俺を映しはしない。





キュキュッ＿＿。





「っは、なんだよ、ねずみ？」





事務机の下から、ゴムが擦れるような物音がした。

こわごわ腰をかがめて、目に飛び込んできたのは、
ふっくらしたウサギの耳と、ピンクのスカートと、
それから、＿＿





「……センセイ？」





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