カラット＜yb×hk＞

＊ ページ29

…



ひかるは俺に軽く平手打ちされた尻を両手で抑えて
ベッドでひと通り悶絶したあと、俺をキッと睨んだ。

コートがうまい具合にずり上がって、色々丸出しだ。



「主役がケガしたらどうしゅんのっ！？」
「お前が仕事の邪魔するからだろ」
「邪魔って、、ひどっ…」



次の手は泣き落としだ。ひかるはわざとらしく眉を
下げて、黒目がちな瞳をうるませた。

あんまり言いたくないけど、演技が下手くそ過ぎて
笑えない。



「だってやぶ全然かまってくんないんだもん…
ご飯作っても反応薄いし、お風呂も別々だし…
でも、仕事してるやぶってセクシーだから、、
近くで見てたらシたくなっちゃうだもんっ…！」



ふんっ。
これがたっぷり我慢させたあとのおねだりだったら
そりゃもう可愛くて胸キュンってやつで、俺の中の
獣もガウガウしていたことだろうと思う。

でも、ひかるは肌ツヤが完璧な顔で、さびしい、と
言うのだ。



「……だから、昼間シたじゃん」
「ふぇ？」
「何回シたと思ってんだよ」
「ん？」



ひかるは寝ころんだまま目を泳がせて、脳内会議を
しているようだ。メッキが剥がれて、色々丸見えだ。



「ひとが飯食ってんのに、咥えてきたの
どこのどいつだっ…」
「っ、やだっ…ほんと痛いんだって…っ」



ひかるのカラダをかき集めるように膝の上に抱えて
ケツを剥き出しにする。手のひらにハァーっと息を
吐きかけると、ひかるがやだやだ、とべそをかいた。



「やぶ、やめて…っ？」
「……」
「、んんっ…」



ケツにフッと息を吹きかけた。怯えた腰がヒクつく。
演じる余裕もなくなった、ありのままのひかるには
下半身が黙っちゃいないから困る。

ひかるがヤダと言うたび、もっとやれ、と騒ぐのだ。





「じゃ、お灸はあっちでやろっか？」
「……オキュウ？」





背中から抱きすくめ、耳元で囁く。
あっちというのはベランダのことで、俺が視線を
ガラスの向こうに移すと、ひかるもあとを追った。

下の道を自転車でも通ったのか、細い光が夜空に
伸びている。





*.+ﾟ



「やぶって普通そうに見えてヘンタイだよねっ。
まぁ劇団やろうなんてヘンタイに違いないけど」
「うるせぇな、、早く足上げろよ」



隣同士くっついたベランダの手すりに、ひかるは渋々
右足をかけた。つま先立ちの左足から膝が震えている。



「下近いよ、見えちゃう…」
「俺は毛皮で隠れてっから」
「えー…おれだけ丸見え…」



アパートの前には車一台やっと通れる道があるものの
この時間は酔っ払ったサラリーマンか、暇な大学生が
まれに通ればいい方だ。



…

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