＊ ページ27
…
「よかったね。……主役戻ってきて」
「……俺もびっくりした」
真綿に包んだような声が鼻にかかって、いつもに
増して聞き取りづらかった。
泣いていたのかもしれない。もしくは、今もまだ。
「向こうのほうがちっこくて可愛いもんね」
「あいつとはそーいうんじゃないから」
顔見て話そ。
そう言って肩を揺すってみるも、ひかるは頑なに
出てきてくれない。
「でも、抱き合ってた…」
「あれは向こうが抱き着いてきただけだから」
布団の上から抱きしめた。どうにも、心もとない。
閉じた布団を無理矢理こじ開け、身体をねじ込み、
背中を抱いた。
ひかるの体温がこもって蒸し暑い。
「不安にさせてごめん」
返事の代わりに短く鼻をすすったひかるの首筋に
顔をうずめて、ぬるい匂いを胸に入れる。
「俺のスターはお前だよ。恋人もお前」
狭い布団の中でなんとなく身体をゆらゆら揺らし
三角座りでふくれている恋人のココロをあやした。
「俺、あんなに必死で口説いたの
お前が初めてなんだけど…もしかして忘れた？」
ひかるがぐりぐりと首を横に振るから、ちいさい
顎を捕まえ、こっちを向かせた。
「あいつにもそう言って帰ってもらった」
”薮ちゃん男もいけたんだね…
早く告白しとけばよかったっ”
”男がいけるとかじゃないよ。
俺、ひかるがいいんだ”
順番が違っていたら、ボタンを掛け違えていたら
隣にいたのはあいつだったのかもしれない、とか
口が裂けても言わない。
「俺が男らしく断るとこ見ないなんて…
惜しい事したなっ」
真っ赤なひかるの鼻をつまんで、ドヤ顔で笑った。
ひかるは笑わない。
「あいつにもひかるの芝居、見てもらおうな」
頬を撫でた。ひかるが数回瞬きをする。
黒目の奥底から星みたいな光が浮き上がってきて
たまった涙にぶつかって光り、定着するのを見た。
「負かそうなんて思うな。
思いっきり感動させてやれ」
ひかるはダイヤの原石、ドラマチックな船、まだ
真っ白な台本＿＿。
俺の特別。そして、世界の特別になる役者だから。
「ひかるならできる」
やっと笑った。
崩れるように笑って泣いた。喉からしゃくりあげ
力強く頷いて、そうしてまた、お腹から息を吸う。
「っ、逃げてごめんね…っ」
翌日。ひかるのオーディションは謝罪から始まり、
台風の目のような沈黙で終わった。
演技に粗削りなところもある。噛むこともあった。
それでも、彼の瞳に宿った星に誰もが魅了された。
ひかるは遂に、劇団カラットの主役の座を掴んだ。
…
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しょこる(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます★ダイヤモンドのように硬くて誰にも壊せない絆を描けて満足です^^次のステージにすすんだ２人に幸あれ☆彡 (2020年6月17日 17時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。キュンキュン、ハラハラ、不器用な2人のキラキラ光る恋に魅了されました。ダイヤモンドにも負けない輝きを放つ２人の人生に全力で拍手を送ります！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ダイヤモンドは綺麗なだけじゃなくて、外から簡単に傷つけることができない硬さも魅力ですからね＊残り数ページ、ふたりのキラキラの行方を見届けてください(-人-) (2020年4月28日 14時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - か弱そうに見えて、その実ダイヤモンドのように硬質な輝きを放つひかちゃんに心奪われます。どうかこの二人がきらめく舞台を続けていけますように…！！ (2020年4月5日 20時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - きょーかさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます＊お話も佳境に入ってきたのでどんどん書き進めていきます^^ (2020年3月26日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年7月27日 22時
