* ページ3
…
晴れ渡る空に、パンツという言葉がまっすぐ飛んでいった。
急に人目が気になって、声のボリュームを絞る。代わりに
身振り手振りジェスチャーを添えた。
「ケツが見えてる、って…!」
「もうちょっとぉ…っ」
白い双丘はツン、ーと上を向き、朝の光を浴びてより白く
光っている。向かいのマンション、上の階、隣のベランダ、
ザッ、と確認した範囲では見られていない(今のところは)。
もしこの現場を誰かに目撃されたら、どう思われるだろう。
なんて。『ゲイカップルの痴話喧嘩』に決まっている。
"物語のある人種" の巻き込み力を恨みながら、どこが裾か
わからない裾らしき部分に両手を伸ばし、ぐっと鷲掴んだ。
「っだぁーもぉっ、!!ケツっ!!」
「っ、ひゃっ…!!」
思い切り下に引っ張る。毛玉はずりん、と落っこちてきた。
抱き止めてやるつもりが、巨大なクッションみたいな塊に
俺が埋もれていた。腕や頬がチクチクする。
「なにすんだよっ!もうちょいだったのにっ…!」
「だってお前、、ケツが見え……」
鼻先が触れた。
生
乱れた前髪の隙間から俺を睨みつける瞳に釘付けになった。
"雷が落ちた" という表現は違う気がして、別の言葉を探す。
なんとなく散歩をしていた川原。無数の石ころに埋もれた
ダイヤモンドの原石。手に取れば、それが本物だとわかる。
男はどいてよ、お尻擦りむいたかも、と文句が止まらない。
「しーーっ……」
ほっぺを膨らませながら、男は素直に声を押し殺している。
汗ばんだ額に手のひらを添えて、そっ、と前髪をかき上げ、
言葉を失った。
舞台映えする堀りの深い顔立ち、光と影のコントラストに
吸い込まれそうな引力と物語性を見出さずにはいられない。
中世ヨーロッパの売れない作曲家、国王の寵愛を受け命を
狙われる娼年、夜な夜な心を求めて彷徨うクルミ割り人形、
初恋に戸惑うラブドールも悪くない__。
瑞々しい時間は、とめどなく流れた。
「ねぇなんか言ってよっ、、怖いんだけど…っ」
怯えた表情にさえ鳥肌が立った。雨に濡れそぼる捨て猫も
ハマり役だ。
「…お前………」
丸っこい肩を掴んで、今にも噛みついてきそうな野良猫に
こっちを向かせる。久しぶりに感じた、身を焦がすような
創作意欲を、未来の看板役者を、みすみす逃がしたくない。
・・ー俺に、磨かせてほしい。
「 お前、役者になれ 」
…
321人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます★ダイヤモンドのように硬くて誰にも壊せない絆を描けて満足です^^次のステージにすすんだ2人に幸あれ☆彡 (2020年6月17日 17時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。キュンキュン、ハラハラ、不器用な2人のキラキラ光る恋に魅了されました。ダイヤモンドにも負けない輝きを放つ2人の人生に全力で拍手を送ります!素敵なお話をありがとうございました。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ダイヤモンドは綺麗なだけじゃなくて、外から簡単に傷つけることができない硬さも魅力ですからね*残り数ページ、ふたりのキラキラの行方を見届けてください(-人-) (2020年4月28日 14時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - か弱そうに見えて、その実ダイヤモンドのように硬質な輝きを放つひかちゃんに心奪われます。どうかこの二人がきらめく舞台を続けていけますように…!! (2020年4月5日 20時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - きょーかさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます*お話も佳境に入ってきたのでどんどん書き進めていきます^^ (2020年3月26日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しょこる | 作成日時:2019年7月27日 22時