カラット＜yb×hk＞

＊ ページ21

…



「最後は一緒に捕まえよう…」
「もっとこう…飛んでくロケットを目で追うイメージでっ」



芝居の練習は、頭を切り替えて集中。付き合う前となんら
変わらない。

＿＿ただし、休憩時間をのぞいては。



「疲れたぁ〜……やぶ、ぎゅうして？」
「……ちょっとだけな」



ひかるはお菓子休憩やアニメ休憩の代わりに、ハグ休憩や
頭ナデナデ休憩や２人でごろごろ休憩を求めてくるように
なった。



「やぶ、チューして」
「……ん、」



給料替わりのキスは、おやすみのキスに変わった。
もちろんキスだけで終われるはずもなく、ほとんど毎晩の
ように身体も愛した。





「あっ、んっ…やぶ…っ、
またイっ、ちゃうっ…！」





部屋の電気を消すと、スイッチが入るらしい。
昨日は「電気つけたままでシよ」って丸め込んでみたけど
ひかるが恥ずかしがって顔は隠すは、声まで我慢するはで、

まぁ、あれはあれでめちゃくちゃ可愛かった。





「ねぇ、やぶ？」
「……ん？」





気の済むまで愛し合ったあとは、こうして煙草を吸う俺の
背中に、ひかるがぴっとり張りついてくるのがお決まりに
なった。ふたりの素肌が馴染んで、境目がわからなくなる
までの時間が、日に日に短くなっていく。



「やっぱりなんでもないっ」
「なんだよ気になるじゃん」



三角座りでちいさくなっていたひかるとおでこをあわせて
ちゃんと話せ、という意味を込めて「ん？」とだけ唸った。

ひかるは上目遣いで、わずかに前後に揺れた。





「もし、おれが役者になれなくても…
おれのこと好きでいてくれる？」





涙目なところを見ると、どうやら本気らしい。
俺は見くびられたもんだな、と、煙草を胸まで深く吸った。

俺がひかるを愛する気持ちも、ひかるが積み重ねた努力も、
ひかるが思うよりずっと、着実に、深く根づいているのに。



「バカなこと言ってんな」
「っ、何がバカなのっ？」



ひかるは焦りに任せて俺の背中をペちんっ、と甘く叩いた。
それは痛いというか、なんだかむず痒くて、まだ半分以上
残った煙草を灰皿にグジグジ、押しつけた。





「お前が役者になれないワケないだろ」





柄にもなく、手なんか握ってみる。
ひかるは隠しきれない照れを隠すように、背中にべっとり
余すことなくくっついた。



「嬉しいけどさぁ〜…
そういうんじゃなくてぇ〜…」



それでも俺はお前を〜…みたいなさぁ〜…。
ひかるはぶつくさ言いながら、背中におでこをグリグリと
こすりつけ甘えてくる。

言いたいことはちゃんとわかっているけど、まだ言わない。



…

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