ねぇ、だれにも知られないで ＜yb×hk＞

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…



おれい【御礼】
感謝の気持ちを表すこと。また、その言葉や贈り物。


おれい【御礼】
恋人に口元についたクリームを舐め取らせること。
また、それを見せつけること。


どくせんよく【独占欲】
あるものを自分だけのものにしたいという欲求。
ひとりじめしたいという欲求。


やぶ【薮】
独占欲丸出しの王様。
上から目線、自分勝手、高身長、金髪。
昔のほうが可愛らしかった…と思われるが
実際のところあまりよく知らない。
残念ながらヤオトメの恋人。





…時計の秒針の音が、自分のドクドクと重なる。


薮が仕向けた”敵意”という細かくて鋭利なトゲが
ぷすぷす、と二の腕やらほっぺに刺さっている。
私がもし風船だったなら、
空気が抜けてぺしゃんこになっていただろう。



かさこそ、とポケットから
”言ってはいけないことリスト”を取り出した。


ヤオトメが1人で健気に守り続けてきた秘密。
今は、薮だけが知らない2人の秘密。


上から順にもう一度読み返してみたけれど
この数時間、ちゃんと秘密は守れている。




”大学の女の子と仲良くされるのほんとは嫌だってこと”




下から2番目の項目をなぞって指で弾く。

こんな可愛いこと、一生薮には言ってやらなくてよい。








「なにこれ？」







その時、すっ、と重力に逆らい、リストが消えた。


それは椅子の上に立った薮の手によって
天井スレスレまで舞い上がっていた。



「ちょっと、返してっ！勝手に見ないで！」



「……んー？」



薮の間延びした声だけが降ってくる。
届かないとわかっていても、手を伸ばさずにはいられない。


タイトルを書いていなかったのが不幸中の幸いだ。
無い頭をフル稼働して、嘘のタイトルを考える。
”私の彼氏への不満”っていうのはどうだろう？
…彼氏なんていないのに…誕生日なのに…こんちくしょー。








「これ全部ひかるのことじゃん？」








……………え？








「…あ、わかった。
私のほうがひかるのこと”知っちゃってます”アピールするために
わざわざメモしてきたんだ？」



薮はお行儀悪くテーブルの上に腰を下ろしていた。



「でも、残念。俺の知ってることしか書いてない」



「…そ、そんなはず……！」



私はぐぐ、と口を紡いた。
これ以上情報を漏らすものか。

返却されたリストを今更と思いつつも
何度も何度も畳んで用心深くポケットの奥に仕舞い込む。




「…てか、そんなことまでお前には話してんのかー……」



…

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