＊ ページ35
…
「…その化けの皮、剥いであげようかしら？」
私は右手の爪を立てて引っ掻く真似をした。
「…どうやって？
言っとくけど、この先やぶには会わせないよ？」
”お前はおれの秘密を知りすぎた”、とでも言いたげに
本人はニヒルな笑顔を浮かべた ー つもりだろうけど
ちらつく八重歯のせいで、それも可愛さにすり替わった。
「…もしやぶに変なこと言ったら、……」
ヤオトメが言葉につまり、それ以上何も言えなかった。
それを見て、私はこっそり胸を撫で下ろした。
ヤオトメはあのひまわりを捨てられないように
私のことも捨てられないみたいだ。
「…無理してない？」
ヤオトメが首を横に振って、か細い前髪がぱさぱさと揺れる。
「無理なんてしてないよ。
おれ、やぶに褒められたとこはずっとそのままでいたいし、
気に入らなさそうなとこはできるだけ直したいって思うし…
そういうの、おれにとっては自然なことだから」
”片思いが長すぎて、染み付いちゃったんだよ”と、
いたずらっぽく笑った顔に嘘はなかった。
「…あ！お土産わすれてた！」
私は慌てて水色の紙袋から丸いカンカンを取り出した。
クリーム色のカンカンに薄紫の花が描かれている。
かぱっ、と乾いた音をさせて蓋を取ると
ヤオトメが身を乗り出して中をのぞいた。
「なにこれ？すごい、いい匂い…」
ヤオトメがうっとりとした顔をして
犬のように匂いを嗅いでいる。
「スミレの花の砂糖漬けだよ」
「へぇー、すごいお洒落だぁー」
デパ地下で出会った、スミレの花の砂糖漬け。
どんなにキラキラで派手なお菓子にもピンとこなかった私に
これだ！と思わせた薄紫色の宝石。
「そのまま食べてもいいんだけど
紅茶に入れても美味しいらしいからやってみよ！」
昔っから紅茶派だったヤオトメは
今日なにかしら紅茶を出してくれるだろうと思っていた。
それもこのスミレの花を選んだ理由の一つだ。
ひとつ摘んで、ヤオトメの黄色いマグカップに
ぽとん、と落とす。
じわーっと、紫色がマーブル模様に溶け出して
ヤオトメがそれをスプーンでしっかりと混ぜ合わせた。
「…えっと……なんていうか……」
「…泥水みたい」
私は人差し指をぶんぶんと振って抗議した。
…私も泥水みたいって思ったけど、口にしないでよ。
ヤオトメはくすっ、と笑ってから、
特に躊躇した様子もなく
泥水のように濁ったそれを口に入れた。
…
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桜花(プロフ) - しょこるさん» それは嬉しい！ありがとうございます！＾＾お母さんはみんな強いですよね笑深読みしすぎました笑こちらこそよろしくお願いします！ (2016年4月24日 23時) (
レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 桜花さん» ボードの方にも感想くださって、すごく丁寧に読み込んでもらえてて嬉しいなーって思いましたよ！^^確かに将来的にお母さんになるから女性は強いってのもありますよね＊私もそこまでは考えてなかったので、逆に考えさせられました^^これからもよろしくお願いします＊ (2016年4月24日 23時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - しょこるさん» お返事ありがとうございます！いえいえ！ありがとうございます！読み込めてますでしょうか…読み込目ていたら嬉しいですてですよね…子供を守らなきゃいけないからとかですかね…？はい！応援してます！ (2016年4月23日 6時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 桜花さん» はじめまして！^^ボードの方にもメッセージくださってありがとうございます！そちらも後でお返事しにいきますね＊すごく深いとこまで読み込んでくださって嬉しいです。…やっぱり女の子ってどこか強いもんですよね笑 これからも応援よろしくお願いします^^ (2016年4月23日 2時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - はじめまして！読んでてあまりにも興奮？したので感想を送らせてもらいます！笑 最終的に立場？が1番上なのはやはり女の子で、でもそれに気づかず精一杯光くんを独占してる薮くんにとても笑いました！私はこのシリーズ？が大好きです！これからも頑張ってください！ (2016年4月22日 22時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2016年2月28日 23時
