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…
「可愛いセーラー服が着たいからです!」
…顔から火が出そうだ。
左頬に刺さるお母さんの視線が痛い。
”なぜ無理してまでその高校に行きたいのか"
先生にたずねられた私は、
"ヤオトメと薮が行くからです!"とは言えなかった。
三者面談の前日になっても、
ぐじぐじと進路を決めかねていた私にヤオトメが
”…可愛いセーラー服着てみたいんじゃないの?”
とか、まるで拗ねた子供のように
目も合わせず言い放ったせいだ。
普段はそっけない猫が気まぐれに擦り寄ってきたような。
そんなこそばゆい感覚に腕を引っ張られ
私は自分の進路を決めてしまった。
一緒の高校目指そうよ、とか、もっと可愛く言えんもんかね?
…
それからのヤオトメは、サッカーやゲームの比じゃないくらい
取り憑かれたように勉強し
もちろん私も必死で後を追った。
ヤオトメに会うたび、カバンの中の単語帳が増えていて
それを見るのが、私は好きだった。
しまいには、5本の指すべてに単語帳のリングを引っ掛け
一心不乱にめくり続け、その目は狂気じみていた。
笑ってはいけないと思えば思うほど、それは滑稽に見えた。
放課後の理科室が、暖房なしではいられない気温になった頃
”私達”は模試でB判定を取るまでに成長していた。
「これで肝心の薮だけ落ちちゃったら意味ないよねー」
今、人生で1番勉強している。
たしかな手応えを感じていた私は
薮を心配する余裕すら手に入れていた。
ー あ。
「意味なくないよ。
こんなに必死で勉強したんだから。
もしやぶが落ちたとしても、おれはこの高校に行く」
ー また、だ。
「薮は関係ない?」
「関係ないよ」
”関係ない”と言い切る時のヤオトメを
私は、コワイ、と思い始めていた。
肝がすわった目。排他的な目。
薮も、薮の彼女も、なんにも映っていない目。
その時だけは、ヤオトメが本当に薮のことを好きなのか
わからなくなる。
「…でも薮と一緒の高校行きたいよね?」
「…………行きたいよ。死ぬほど」
そんな時は、こうやって、
たしかな言葉を聞き出して自分を安心させることにした。
…
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桜花(プロフ) - しょこるさん» それは嬉しい!ありがとうございます!^^お母さんはみんな強いですよね笑深読みしすぎました笑こちらこそよろしくお願いします! (2016年4月24日 23時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 桜花さん» ボードの方にも感想くださって、すごく丁寧に読み込んでもらえてて嬉しいなーって思いましたよ!^^確かに将来的にお母さんになるから女性は強いってのもありますよね*私もそこまでは考えてなかったので、逆に考えさせられました^^これからもよろしくお願いします* (2016年4月24日 23時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - しょこるさん» お返事ありがとうございます!いえいえ!ありがとうございます!読み込めてますでしょうか…読み込目ていたら嬉しいですてですよね…子供を守らなきゃいけないからとかですかね…?はい!応援してます! (2016年4月23日 6時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 桜花さん» はじめまして!^^ボードの方にもメッセージくださってありがとうございます!そちらも後でお返事しにいきますね*すごく深いとこまで読み込んでくださって嬉しいです。…やっぱり女の子ってどこか強いもんですよね笑 これからも応援よろしくお願いします^^ (2016年4月23日 2時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - はじめまして!読んでてあまりにも興奮?したので感想を送らせてもらいます!笑 最終的に立場?が1番上なのはやはり女の子で、でもそれに気づかず精一杯光くんを独占してる薮くんにとても笑いました!私はこのシリーズ?が大好きです!これからも頑張ってください! (2016年4月22日 22時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこる | 作成日時:2016年2月28日 23時