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…
昔のことを思い出していたせいもあり
いつもは言わない歯が浮くようなセリフを吐いてしまう。
「…じゃあ、ヤオトメの作るすげぇチョコは、
薮との愛の結晶ってわけだ。」
「…んなっ!?…ちがうちがう!全部、おれの実力!
じゃなくて努力!やぶは関係ないじゃん!」
ヤオトメは耳まで真っ赤にして
謎のヘラと、私から奪った泡だて器を指揮者のように
ぶんぶんと振って、愛とか言うなー!と小さく暴れた。
しばらくして、ふっと落ち着いたヤオトメは、
そろそろ料理が来そうだねと、ボックスを閉じて、
なめらかなビロードを愛おしそうに撫でながら、
何年ぶりかの弱音をこぼした。
「…やぶに指輪なんてもらっても、おれ、何にもなれないもん」
「それなら、ショコラティエになったほうがいいでしょ?」
自分で自分を傷つけるような言葉を選んで
それでも、ひとこと、ひとことしっかりと目を見て話す彼は
どこまでも強くて儚くて、
潰れるほどぎゅっとしてやりたい衝動に駆られる。
― ほんとは泡だて器なんて欲しくないんだよね。
ヤオトメは指輪より泡だて器を選んだ。
そうやって、選び続けてきたんだってことにやっと気がついた。
薮から約束をもらう勇気も自信もなくて、
必死で無理やり欲しい物を考えつづけてきたんだよね。
― ヤオトメが本当に欲しい物ってなんだろう?
― 薮にあげられないなら、私が。
「今さら言いづらいんだけど…、実は最近レポートが忙しくて
まだプレゼント買えてなくてさ…ごめん!」
神経質が発動して、魚の骨をちまちま取っていたヤオトメが顔をあげて、えぇー。なんだよー。ひどいぞー。と
わざとらしく頬っぺたを膨らませる。
「おわびになんっでも買うから!1番欲しい物言って?
あ、でも2万円以内で!」
ヤオトメが、演技じみた動きでほぅ…と顎を触る。
顎から離れた手がゆっくり宙を舞い、
私が足元に置いていたベージュの鞄をピシッと指さし、
すぐに手の平を広げて上を向けた。
ふんわりと優しくほほ笑んだ本日の主役は
どんなわがままも許されるこの特別な夜にさえ
わがままを言わなかった。
「……ふふ。…じゃあ、そのカバンの中のものちょうだい?」
(カバンの底で、リボンが少し曲がってるかも、)
―――――――――――― 20歳の -バースデープレゼント- ―
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桜花(プロフ) - しょこるさん» それは嬉しい!ありがとうございます!^^お母さんはみんな強いですよね笑深読みしすぎました笑こちらこそよろしくお願いします! (2016年4月24日 23時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 桜花さん» ボードの方にも感想くださって、すごく丁寧に読み込んでもらえてて嬉しいなーって思いましたよ!^^確かに将来的にお母さんになるから女性は強いってのもありますよね*私もそこまでは考えてなかったので、逆に考えさせられました^^これからもよろしくお願いします* (2016年4月24日 23時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - しょこるさん» お返事ありがとうございます!いえいえ!ありがとうございます!読み込めてますでしょうか…読み込目ていたら嬉しいですてですよね…子供を守らなきゃいけないからとかですかね…?はい!応援してます! (2016年4月23日 6時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - 桜花さん» はじめまして!^^ボードの方にもメッセージくださってありがとうございます!そちらも後でお返事しにいきますね*すごく深いとこまで読み込んでくださって嬉しいです。…やっぱり女の子ってどこか強いもんですよね笑 これからも応援よろしくお願いします^^ (2016年4月23日 2時) (レス) id: 7e239da259 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - はじめまして!読んでてあまりにも興奮?したので感想を送らせてもらいます!笑 最終的に立場?が1番上なのはやはり女の子で、でもそれに気づかず精一杯光くんを独占してる薮くんにとても笑いました!私はこのシリーズ?が大好きです!これからも頑張ってください! (2016年4月22日 22時) (レス) id: 3632683579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこる | 作成日時:2016年2月28日 23時