【HQ】MajiでKoiする5日間 Ⅲ 【月島蛍】 (ページ18)

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64秒ドキドキページ18

64秒経過

-月島 side-

「A」

彼女が食堂の台所に1人でいるところをみつけた。

大量の食器を黙々と洗っていて、僕が呼びかけても気づいていない。

『あ、蛍』

僕が台所に足を踏み入れて、ようやく気がついた。

「1人なの?」

『うん。結局わたし何にも手伝えなかったから、せめて片付けは任せて下さいって無理やりお願いしたの』

申し訳なさそうにふにゃりと眉を下げて笑う。

「…手伝う」

『ど、どうしたの?』

「僕が手伝ったらおかしい?」

『ううん!ありがとう!』

Aが洗って、僕が拭く。

特別会話があるわけじゃないけど、Aとなら不思議と沈黙ですら心地よく感じられる。

『今日、お兄ちゃんにバレちゃってごめんね…』

最後の1枚を戸棚に閉まった時、Aがぽつり呟いた。

『蛍とのことが嫌で相談したわけじゃないから、ね?』

「…うん」

安心した。

本当はこの関係を辞めたくて、相談したんじゃないかと心のどこかで落ち着かなかったから。

「兄ちゃんに相談するまでもないデショ」

『へ?』

「前も言ったけど、僕は君だから嫌じゃないんだよ」

『そっかあ!良かった!』

君は胸を撫で下ろして、ふにゃっとした笑顔をみせる。

洗い物を全部終えた僕らは、電気を消して食堂を後にした。

「それと、さっき菅原さんから聞いたよ」

『まさか聞かれてるとは思わなかったよね』

薄暗い廊下を2人で並んで歩いて、Aを女子部屋まで送る。

「とりあえず誰にも言わないでいてくれるって」

『じゃあまだマジで恋するふりは続行だね!』

恋人の"ふり"。

本当の恋人になりたいって言ったら君は困るよね。

〈月島がAちゃんをドキドキさせて、男だって意識させればいいんじゃないかな!〉

ドキドキ、か…

『わざわざ送ってくれてありがとう!

また明日もがんばー』

Aの言葉を遮るようにして、僕はおでこにキスを落とした。

『!?け、け、け、蛍!?』

おでこに手を当ててAが慌てている。

ドキドキしているのかは、暗くてわからない。

「恋人っぽいデショ」

『そ、そ、そうだけど』

「おやすみ」

僕はくるりと背を向けて、男子部屋に戻る。

心臓が飛び出しそう。

身体が熱い。

足元がふわふわする。

「ドキドキしたのは僕の方じゃんかよ…っ」

菅原さんが僕にくれたアドバイスは見事に役に立たなかった。

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