5 ページ5
「え゛っ」
「すぐ良くなるから大丈夫ですよ〜」
と言われながら担架に載せられて運ばれる。どうすればいいのか分からず、きゅっと手をお腹の上で組みながら大人しく小さくなっている。
仰向けのまま景色が流れていく。景色というか、蛍光灯のついた病院の天井たちが。病院独特の消毒のにおいが満ちている。不快ではない。
「やー、お姉さんいっぱい怪我してるね。大変そう。とりあえずアイスパックと…」
……一方、その頃。
青井は停めたヘリに乗りながら、休憩がてらタバコの煙を吐く。
「青ちゃーんやっほ〜、何してんの?」
「赤ちゃんじゃーん、今休憩中」
救急隊の知り合い―――赤兎がみともに声をかけられれば、窓から顔を出し、ふーっと煙を吐く。
「あれっ、そうなんだ。事件で、誰か警察連れてきたのかと思った。来ただけ?」
「あぁ、いや。なんか女の子が道に倒れてて。記憶喪失らしいし、ケガだらけだったからとりあえず病院に連れてきた」
そう言うと、がみともの仮面の奥の丸い目元が、さらに大きく丸くなった。
「えっ、何それ!大変。死にかけた人かなあ。心配だね」
「うーん…。今のところ怪しいそぶりはしてないけどねぇ…」
トン、とタバコの灰を落とす。
「ま、なんか隠してそうなんだけどね。名前も教えてくれないのは困るなぁ」
「本当に覚えてないのかもよ?」
「ま、それならそれでいいんだけどねえ」
「疑わないといけないんだ、警察って大変だねぇ」
ポケット灰皿を取り出し、タバコの吸い殻をしまう。
「もし名前、本当に覚えてなかったらどうするの?」
「んー…、名前つけることになるかな。呼びづらいし。ネルさんにでも相談する」
「おっ、いいね!楽しそう呼んでよ俺も」
「あはは、いいよおいで」
青井はずっと彼女を推し量っていた。実は、彼女が倒れていた場所はギャング―――MOZUの拠点のすぐ近く。そこに怪我だらけで、記憶もないときた。怪しくないわけがない。
普段の彼であれば、必要であればそもそもどんな人にも手を貸すのだ。倒れている人を助けないわけがない。がしかし、場所が場所である。だから、彼は彼女に手を貸さなかったし、ヘリヘ運ぶことをしなかった。
自分が警察にとって、重要な戦力であることを分かっているからだ。不用意に危険に身を投じることができない。
「何もないなら、それでいいんだけどね」
鬼のマスクの下の目を細めた。治療を終え、帰ってきた彼女を品定めするように。
1181人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
245(プロフ) - かとを74さん» コメントありがとうございます!モチベが倍になりました。とても嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします🥳 (3月28日 11時) (レス) @page23 id: 223c5bae8c (このIDを非表示/違反報告)
かとを74(プロフ) - 更新される度嬉しいです! (3月26日 17時) (レス) id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
245(プロフ) - とくさん» ありがとうございます…!修正いたしました🙇🙇今後ともよろしくお願いいたします☺️ (1月6日 17時) (レス) id: 223c5bae8c (このIDを非表示/違反報告)
とく - めちゃくちゃ面白いです!!更新楽しみに待ってます…!!(ストリーマーグラセフだったのは前で、今はストリートグラフィティ・ロールプレイ、略してストグラのようですよ…!) (12月25日 22時) (レス) id: b931af8e9b (このIDを非表示/違反報告)
カフェラテ好きののあ。 - 8話でこのクオリティ。これは神作品の予感... ! (12月20日 11時) (レス) @page8 id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:245 | 作成日時:2023年12月7日 3時