あそこのカフェはケーキが美味しいらしい。【新開隼人】

完食。(最終話) ページ42

カラン、となるベルの音はいつもと変わらない。


かかってるジャズの音楽は、最近店長が気に入ってる曲らしい。




テーブルにはいつもいるＯＬの女の人がパソコンを見ながらコーヒーを飲んでたり。


大学生ぐらいのカップルが、楽しそうに笑いあってる。






店長「いらっしゃい。今日は少し早いんだね。」


「えぇ、まぁ。Aさんまだですか？」


店長「もう少ししたら来ると思うよ。」





そういや、昨日の電話で最近講義が多い。何て言ってたっけ。


いつもの席に座ると、椅子にかけてあるリボンが愛おしく見えて。



自然に口元が緩んだ。







「(あー、腹減った。今日のケーキなんだろ…。)」




またあのマカロン作ってくれないかな。


慣れてないから嫌、なんて言ったけどほんとに美味かったんだけど。






「(あっ、そーいやカバンに入れっぱなしだった。)」




学校が早めに終わったから久しぶりに部活に参加したから、外したんだっけ。


レトロな雰囲気のオレンジの照明にシルバーリングがキラリと光った。



あぁ、やべ。勝手に顔がにやける。







店長「はい、これ。」


「あ。ありがとうございます。」


店長「ごゆっくり。笑」






最近ようやく苦いコーヒーがすんなり飲めるようになったけど、まだうまいとは感じられない。


無理して飲まないでいいよ、なんてクスクス笑われたからいつか絶対うまいって言えるようにならねぇと。




しばらくすると裏口のほうからガチャって音がして、エプロンをつけてるAさんがでてきた。







A「いらっしゃいませ。」





この笑顔を見ることが、いつの間にか当たり前になって。


気づけば、ここに来る週に２回の時間が楽しくなっていて。



幸せだな、なんて素直に思う。





これから一緒にいることが当たり前で、隣で笑ってるのが日常になるんだったら、俺はもっと幸せだな。







A「なぁに？ニヤニヤしちゃって。笑」


「いや。今日のケーキは何かなぁと思って。」





笑いながらごくっと飲んだコーヒーが、いつもより少しだけ甘く感じた。









ーおわりー

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