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朝、わたしが家を出るとき、ママはまだ眠っていた。
聞こえてはいないと思うけど、眠っているママには「お誕生日おめでとう」と声をかけて、タツくんに教えてもらったカレーに必要な食材をメモした紙がお財布に入っているのを確認してから学校に向かった。
昨日は久しぶりに晴れてやっと梅雨明けかと思ったのに、今日は浮かない天気だった。とても今日が夏休み前最後の学校だとは思えないような。
雨は降っていないけれど、厚ぼったい雲が垂れ込めている。
傘を持ってきていないから、買い物をして家に帰るまでにどうにか
「それぞれ進路を見据えて夏休みの目標を立てること。くれぐれも中身のない休みにならんようにな。」
去年までとは違って教室の中はおだやかで、みんなほどほどに真面目に教壇の前の担任の話を聞いている。
進路を見据えた目標。
まだママには進路の話をしていない。
大学受験に興味がないと言ったら嘘になるけれど、とても現実的なことには思えなかった。
この学校では卒業後就職する生徒のほうが少ないみたいだし、人々の上に立つ偉いひとが大抵大学を卒業していることも知っている。
だけどそれは、わたしにとっては違う世界のことのように思えていた。どちらが良い悪いということではなくて、単純に生きる世界がまったく違うのだ。
今までだったら、完全にそう割り切れていたのかもしれない。
今までだったら。
「鈴木さん」
ふと名前を呼ばれて顔を上げる。
ぼーっとしてる間に終礼は終わっていたようだった。
わたしの名前を呼んだのは錦戸くんで、隣の机からすこし身を乗り出してわたしになにやらひっそりと話しかけようとしていた。
「…あんさ、今日、この後…なんか用事ある？」
「え？」
歯切れ悪くぶつぶつと途切れるように発された言葉がわたしは一瞬わからなくて、錦戸くんの顔をまじまじと見てしまう。
すると、慌てたようにおおきな黒目がきょろきょろと動いた。
「よかったらやけど、どっか遊びに行かん？うちの近くに新しくモールができてん。そことか。…別にそこじゃなくてもええし。」
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蒼 夢見子(プロフ) - もんさん» もん様、しばらくぶりの更新にも関わらず読んでくださりありがとうございます…素敵な感想までいただけて嬉しいです…（涙）気まぐれな更新になってしまっていますがお付き合いいただけるように更新頑張ります…！ (2022年2月6日 14時) (
レス) id: d76122eb40 (このIDを非表示/違反報告)
もん(プロフ) - 更新とても嬉しいです、蒼さんの作品がどれも切ないのに心が暖まって大好きです。 (2022年2月6日 1時) (レス) id: 88e425fb34 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 日玖さん» 日玖様、コメントありがとうございます。(お返事がひどく遅れてしまい申し訳ありません…)そう言っていただけてとても嬉しいです。更新が途絶え気味ですがなんとか最後まで書けるよう頑張ります…！ (2022年2月5日 16時) (レス) id: 0bca9b395c (このIDを非表示/違反報告)
日玖(プロフ) - コメント失礼します！つい先日このお話にたまたま出会い、あまりにも好きすぎて一気読みしちゃいました……！続き、楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2021年10月12日 11時) (レス) id: bbffd7f7da (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - しずくさん» しずく様、初めまして。コメントありがとうございます。書き始めてからたくさん時間が経ってしまい更新も気まぐれで申し訳ないですが、あたたかいコメントいただけて本当に恐縮です。これからも読んでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月19日 20時) (レス) id: 7499a18546 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2019年12月5日 23時
