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「あーっ、くそぉ!負けてもうたぁ。」



ベッドの上で半分寝そべるようなだらしない格好でゲームをしていたマルは仰け反って甲高い声を出した。

それからシルバーのDSを枕の上にほかすとベッドから降りて、俺の向かいに胡座をかいて座る。テーブルの上のポテチの袋に手を突っ込みながら。



「それで亮ちゃんはさ」



バリバリと豪快にポテチを噛み砕くマルは、なんの脈略もなく話し始めたから、俺はテーブルの上に肘をついて読んでいた漫画からすこし視線をそらして丸を見た。



「遊びに誘ったりせえへんのん?」


「…急になんやねん。」



突如投げかけられた話題に照れ臭くて、そう口にしてしまう。特に食べたいと思ったわけでもないのに、ポテチに手を伸ばして一枚口の中に放り投げた。

油でてかてかと光る指先をすこし見つめる。



「こないだ作戦立てよって言うたやん!」


「お前な、面白がっとるやろ。」



俺はマルを睨んでみた。


きっとそんなこともない。多分マルは俺のことを本当に気にしてくれていて、単純に応援してくれようとしていることを俺はわかっていたけど。

ダサ、と俺は思った。わかっているのに、わざと半分拗ねたような、うっとおしがるような態度を取ってしまう自分は、おさなじみていてひどくカッコわるい。




雨が降る日が多くなってきても、鈴木さんと俺の間にはなにも変化がなかった。


すこし前に、自分がよく聴く曲をいくつかCDにダビングしてあげた。鈴木さんはうれしそうに(すくなくとも無理はしていなさそうやった)受け取ってくれたけど、ただそれだけで。


帰り道にイヤフォンから流れる音楽を彼女もひとりで聴いていて、俺のことがすこしでも頭の中に浮かぶといい、なんて、そんなひとりよがりのものに過ぎなかった。




「鈴木さんて、おとなしそうやけどなにが好きなんかなあ。」


マルはポテチのおおきな一枚を頬張る。口の端にあおのりがついていた。

ポテチが噛み砕かれる音の合間。マルの独り言のようなふわっとした呟き。

その呟きは俺に尋ねているわけでもなくて、実際、尋ねられたって答えられないことが無性に悔しい。



「好きなひとがおったらどうするん?」


冗談まじりな口調と陽気な視線でそう言ったマルに、俺は突然、孤独に突き落とされたような気分になる。


自分が半分泣きそうな、情けない顔をしてマルを見ていたことなんて、焦った表情のマルに「冗談やって!」と言われるまで気づけなかった。





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蒼 夢見子(プロフ) - みぃちゃん。さん» みぃちゃん。様、お久しぶりです!いつもコメント下さりありがとうございます…!1,2通しても登場人物たちの気持ちの変化があまりにも微動すぎて申し訳ない気持ちになりますが、3はもうすこし動かせると思うのでお待ちいただけるとありがたいです^^ (2019年12月4日 15時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - なのはなさいたさん» なのはなさいた様、初めまして。更新頻度もすくなく、物語の展開もおそい退屈な話ですが、読んでいただけてうれしいです…。ありがとうございます(涙)引き続き楽しんでいただけるようにがんばりますね!! (2019年12月4日 15時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん。(プロフ) - お久しぶりです!今回もワクワクしながら読ませて頂きました^ ^ いったい、みんなの気持ちがどんな風に動いていくのかなぁ…と思っています〜また読み返しながらゆっくり更新待ってます^ ^無理せず頑張って下さい! (2019年12月3日 0時) (レス) id: 45454de63e (このIDを非表示/違反報告)
なのはなさいた(プロフ) - 初コメです!いつも楽しみに読ませてもらってます!これからも応援しております(o^^o)更新ゆっくりでもいいのでお待ちしてます! (2019年11月30日 13時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - さらささん» さらさ様、あたたかいコメントありがとうございます。えっ3回も飽きずに読んでくださっているのですか…(涙)とてもうれしいです…これからも頑張って書いていこうと思えます…こちらこそ、ありがとうございます! (2019年9月17日 8時) (レス) id: 1f320f9766 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年5月8日 23時

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