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「昨日さ、院のひとらと飲み会やってん。別に行きたくもなかったんやけど。」
シャワーから帰ってきたタツくんはトレーナーをかぶりながらしゃべる。
所在なくソファに座っていたわたしはタツくんを見上げた。
お風呂上がりのやわらかな熱気、洗いたての服のにおいとシャンプーのにおい。
「行ったら結局、死ぬほどおもんなくてさ、手持ち無沙汰やったから酒ばっかがぶがぶ飲んでもうてん。」
一日無駄にしたわ。って諦めたような不貞腐れたような顔して、それから後ろ髪の上半分を掬って髪の毛をまとめ始める。
タツくんが髪の毛を結んだり、ほどいたりする姿をわたしはいつもこっそり、じっと眺めてしまう。それはいつもとても簡略的なのに、すごく綺麗な仕草に見えた。
「二日酔いって、風邪みたいなかんじ?」
「風邪よりしんどいで。誰も憐れんでくれへんもん。」
自嘲するみたいな薄い笑みを浮かべてタツくんは言った。
ママも時々、二日酔いになる。二日酔いの時は必ず昨日飲みすぎたのよって、ひどいしかめ面でため息をつきながら布団に横になって夕方まで起きてこなかったりする。
だったら、飲みすぎなければいいのにって。ひどい風邪を引いたときみたいに顔色が悪くなって、一日寝てないといけないくらいしんどい思いをするってわかってるのに、何度も二日酔いになることがわたしにはずっとよくわからなかった。
でもそれはきっと、おとなにしかわからないことなのかもしれない。ママもタツくんもおとなで、わたしは子どもなのだ。
そのことがすこし、歯痒い。
「何食いたい?夕飯。」
「…和食。」
「和食?」
わたしのとなりに腰を下ろして携帯をいじっていたタツくんはわたしを見る。物珍しそうな顔で。
「和食なら二日酔いでも食べられるってママが言ってた。」
わたしがそう言うと、タツくんはしばらく――といってもそれは数秒のことだけど、長く感じられた――何を思っているのかわからない表情でわたしを見つめてきて、
「やさしいんやな。」
すっと目をそらすと呆れたみたいに笑って呟いた。
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蒼 夢見子(プロフ) - みぃちゃん。さん» みぃちゃん。様、お久しぶりです!いつもコメント下さりありがとうございます…!1,2通しても登場人物たちの気持ちの変化があまりにも微動すぎて申し訳ない気持ちになりますが、3はもうすこし動かせると思うのでお待ちいただけるとありがたいです^^ (2019年12月4日 15時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - なのはなさいたさん» なのはなさいた様、初めまして。更新頻度もすくなく、物語の展開もおそい退屈な話ですが、読んでいただけてうれしいです…。ありがとうございます(涙)引き続き楽しんでいただけるようにがんばりますね!! (2019年12月4日 15時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
みぃちゃん。(プロフ) - お久しぶりです!今回もワクワクしながら読ませて頂きました^ ^ いったい、みんなの気持ちがどんな風に動いていくのかなぁ…と思っています〜また読み返しながらゆっくり更新待ってます^ ^無理せず頑張って下さい! (2019年12月3日 0時) (レス) id: 45454de63e (このIDを非表示/違反報告)
なのはなさいた(プロフ) - 初コメです!いつも楽しみに読ませてもらってます!これからも応援しております(o^^o)更新ゆっくりでもいいのでお待ちしてます! (2019年11月30日 13時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - さらささん» さらさ様、あたたかいコメントありがとうございます。えっ3回も飽きずに読んでくださっているのですか…(涙)とてもうれしいです…これからも頑張って書いていこうと思えます…こちらこそ、ありがとうございます! (2019年9月17日 8時) (レス) id: 1f320f9766 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年5月8日 23時