I need you！ vol.2 (ページ39)

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How？ Ⅳ M ページ39

その日のMV撮影は、とある海辺のレストラン。
倉庫型のライブスタジオも併設されているから、幾度かお世話になっている場所。

しかし、久々にめっちゃダンスするMV撮影だったから汗だくだわ。坊主でも汗っかきに変わりはない。
ま、今日もいい汗掻いてます。

『ダイビングしてぇな……あ、結局、宮はタマと釣り行かないの？』

休憩中。携帯扇風機で髪を乾かしているとニカが海を眺めながら訊いてきた。
俺が、タマと釣り行きたいって何度か言ってたからね。

『タマが連れてってくんな〜い。』

てか、俺がお邪魔せずに、タマが趣味に没頭できる時間があったほうが良くない？
役者仕事忙しかったし、初心者の世話しんどいだろうし、メンバーの特色としても、釣りはタマのジャンルにしときたい。アニメは俺…みたいにね。
何より、俺がじっと釣り糸垂らしていられる自信もない。
……あれ？俺、自分勝手かな。

『おい、宮。コレ。』

ニカとの会話を後ろで聞いていたタマが、何かを俺の手のひらに載せた。

…ひと握りのご飯粒？？？

『それで魚釣ってきたら、釣りに連れてってやる。…釣るまで帰ってくんじゃねーぞ！！』

しまった。
タマ様がお怒りになられたか。
釣り行かないの、タマのせいにしたからな。

仕方なく、ひとりで建物のすぐ前の船着場に出て、海にご飯粒を撒いてみた。

…わぁ、小さなお魚さんがいっぱ〜い。
でも釣り道具もないから見てるだけ〜。

……って、何だコレ？？

しばらくすると、背後に慣れた気配。

『暑かったから丁度いいでしょ？』
『…ああ、確かに。めっちゃ気持ちいいわ。』

タマが隣に座り込む。

『いつもこんなとこで釣りしてんの？』
『う〜ん、いつもはあんな防波堤とか？ああいうとこのほうが大きいのが回ってくるから。』

タマのことは何でも知ってるはず。
でも、こんな知らない顔に出会うのも実は楽しい。

『……釣りしなくても、海はいいな。』
『んふ。お前、魚より肉だもんな？』

さっきとうってかわって、穏やかで楽しそうな顔を見ると嬉しくなる。

何艘かの白い船と海原の柔らかな鈍い光。波がコンクリートを打つ軽い水音。水平線の向こうから吹いてくる優しい海風。
タマと並んで座っているだけで、俺の見る世界はこんなに綺麗で。

……あー、そうか。
俺と２人きりになりたくて、無茶振りしたの？
なんだか俺の髪も乾いたし。

可愛いタマ。
海のように広い心で、俺を大切に想っていてくれる人。

fin.