Three Cards �� M ページ13
『宮っちは幸せなの？』
昔、千ちゃんが訊いてくれたこと。
タマに一瞬フラれたあの時期、千ちゃんとガヤさんは俺の様子に気付いた。
千ちゃんは優しい。天然なとこもあるけど、いつも誰かを気に掛けている。
自分が誰かを不幸にしていないか、自分の言葉が誰かを傷つけていないかと気にしてる。
少しテンパる癖は俺に似たのかな。
メンバーの最年少なのに、常に自分が何をすればグループの為になるのかを探究し続けている人。
自分の成長の為なら、後ろ向きになることを厭わない勇気のある人。
俺とタマと舞台で共演している間にも、千ちゃんは芝居も歌も魅せ方も、その優しさにもどんどん磨きをかけていった。
そんな千ちゃんが、俺の失恋に気付くのは自明の理だったのだろう。
『幸せだよ〜？どうして？』
『……最近のタマ、宮っちに冷たいかなって。あ、何でもないならいい！…でも、何かあったら聞くから。』
タマになら騙されてもいい。
タマになら秘密を持たれても構わない。
タマになら殴られてもいいし、怒られてもいい。
その全てを受け入れることが俺の存在意義。
でも、俺のそばから離れていくことだけは受け入れられない。
そんな俺にとっては、それは天変地異の出来事で。
けれど、絶対に落胆は顔には出していないつもりだった。
でも気付かれたなら、隠すつもりはなかった。素直にフラれたと話す。
『……宮っち、損してない？タマのこと受け入れてばっかりで。』
千ちゃんが呆れたように訊ねる。
損得で考えたことなかったな。だって、気付いたらもう好きだったから。
むしろ、こんな俺を好きになってくれたタマを、とにかく幸せにするにはどうしたらいいのか考えてたら、それはタマを丸ごと受け止めることだと思ったんだよな。
タマがタマでいられるように。
タマは相変わらず、俺のそばにいた。
冗談を言い合ったりはしていたが、必要以上にくっついたり、殴ってきたり、微笑み合ったりはしなかった。
それがただのメンバーの普通の状態だというなら、受け入れるしかないと思っていた。
『でも、タマはそれで幸せなのかな……？』
あの頃、千ちゃんの呟きが何処か遠くで聞こえていた。
今思えば、自分の悲しみにだけ囚われて、タマのことを思いやれなかった俺は、ただの独りよがりだったのかもしれない。
その後、結局寄りを戻した時には、泣いて喜んでくれた千ちゃん。
本当に優しいのは俺なんかじゃない。
可愛い天使はちゃんとここにいる。
fin.
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作者名：みあん | 作成日時：2021年5月11日 23時
