I need you！ vol.2 (ページ43)

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One Pair ⅪV M ページ43

『ジム疲れた〜。』
『おっつ〜。』

シャワー浴びてきたタマの髪を1人掛けの椅子の後ろからドライヤーで乾かしつつ、彼が台本読む姿に見惚れた。

顔は見えないけど、白く光るうなじや両肩の線、厚くなった胸筋、時折ページを捲る腕の美しい筋、片膝立ててる足の指の関節。
ドライヤーの爆音に混じって、小さく聞こえる台詞は少年期を思わせるような柔らかなハスキー声で。
俺の指の間に軽く挟んだ髪は、柔らかくてふわふわ。それを優しく引っ張りながら、風を当てる。

『身体作りは順調？…みたいだな。』
『ん。』

仕事に合わせてしっかり身体を作るタマの信条は見習わないと。俺も頑張ろ。

集中してるから、髪乾かしたら帰ろっかな。
昨日お泊まりして、俺は昼から主人のいなかったタマの部屋でお休みを満喫した。

タマがいない間に掃除機掛けたし、シーツは替えといたし、洗濯したし。窓も開けたし、植物ちゃんたちにもお水遣った。
本当はお買い物に一緒に行きたかったけどね、
近頃、夜は食物繊維たっぷりで太りにくいとかいうポップコーンで済ませるらしいから、もう俺にできるお世話がない。

まだ夕方にもなってないじゃん。帰ってゲームでもするか。新しく買ったゲーミングPC使いこなせるようにならなきゃ。

充実したお休みだ。

『今日さぁ、またお泊まりするでしょ？』
『え？』

見透かされたように訊かれて、たじろいだ。
俺の戸惑いも感じ取ったタマが、振り仰ぐ。

『帰ろ…かなって思ってたんだけど。タマ、お疲れだし、明日は早朝から釣り行くんだろ〜？早く準備して寝なきゃ〜。』
『……寝るけど。ポップコーン作ろうよ。味、色々試したいし。１人だといっぱい試せないんだよね。』

真っ直ぐに見つめてくる丸い榛色の瞳に、長いまつ毛の影。

…はい。参りました。

ドライヤーを止めて、戸棚の中のコンセントを抜き、コードを巻き取りながら思わず微笑む。

忙しい合間の、一緒にいられる時間は大切にしたい。
そんなタマの気持ちが嬉しかった。

『楽しみ。ポップコーン弾ける音好きなんだよなぁ。前のバター塩も美味しかった。』
『んふ。俺も音好き。あ、カレー粉あるよ？』
『いいね〜。こないだバター醤油も美味いって言ってたよね？』
『それも作ろ。あとは〜…。』

ウキウキし始めたタマが、キッチンに入った。
俺もついていくと、種と鍋と蓋を渡される。

『やってみ！』
『俺っ！？』

悪戯な笑顔が綺麗だ。

俺のお休み充実してます、ほんと。

fin.