白い祈り (ページ2)

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『大丈夫ですよ。僕は…内科外科問わず医師って医療技術や医療知識と患者さんの《橋渡し役》だと思うんです。如何に橋を上手く提供できるかが腕の見せ所というか…その為にしっかり知識を身に付けて患者さんのことをよく見ることができる医師が優秀な医師だって……あ、えと〜、僕が考えたんじゃなかった。そう、大学の時の担当教授に教わりました。』

……そういや、まだ赴任した挨拶に行ってなかったな。教授も同じ敷地内にある医大に移っているはずだ。夜勤明けの日にでも行ってみようかな。

『なるほど…素晴らしい考え方ですね！先生はこの医大出身者なんですか？此処ならアクセスいいし、学生さんも住みやすかったでしょ？？俺が学生の時なんか周りに遊ぶとこが何にもなくて、アニメショップ行くのも一苦労…と、しまった。今のは聞き流して下さい。』

奥邑さんの顔がマスク越しにも真っ赤に染まるのが分かる。

アニメ…俺もアニメは見るけどショップにわざわざ行ってグッズ買おうとは思わんぞ？アニメオタクさんなの？？
ちょっと鼻が大きいけど二次元みたいに綺麗な顔してる人が二次元を好きって、なんだか面白い。

『いやいや、俺もアニメ好きですよ？今やアニメは大人の文化ですよねー！アニメショップは行ったことないんですけど…それに僕が学生の時は残念ながらまだ此処はできてないので。』
『そうでした。この病院も医大もまだ開設して３ヶ月ですもんね。すみません。』

彼はまた恥ずかしそうに後頭部に手をやった。
その手につられて後ろの窓の向こうの景色が目に入る。

青空の下、少し向こうには大きな駅。林立したビルの谷間をたくさんの人々がこちらに向かって歩いてくる。病院へ渡る歩道橋の上にはちっちゃな子どもたち。この病院附属の保育園に来るのだろう。
駅からのシャトルバスや自家用車も途切れることなく病院の敷地へ乗り入れてきた。

……今日も外来は忙しくなりそうだな。
もう少し奥邑さんと話してみたいけど、今朝入院したという患者さんの様子を確認してすぐに戻らなきゃ。

潤正医大が、とある大きな駅前に大きな土地を購入したのはもう２０年ほど前のことだという。戦前から此処に在った財閥企業の工場跡地は、この時代にしては破格の広さだった。
しかも此処の駅はこの地域では最大駅。いくつかの路線や長距離バスも乗り入れている。
正面は地域のメインステーション、一級河川の土手に隣接している最高の立地が買えたのは、奇跡的だと思う。