ひとくふう荘14 (ページ48)

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『だが、タマモリの孫。これは知っておいて？願いを叶える為に代価を払わねばならないとしても、他人の命を支払いに充てることはできないのだ。どうやったって他人の命はその人のものさね。
つまりそのアヤカシは二重に契約をしていたのだろう。タマモリの内儀とも約束をしていたのだねぇ。抜け目のないことだ。』

『……ああ。』

呟くお父さんが泣きながら僕のほっぺにお手手を寄せる。
そのお手手にお顔をたくさん擦り付ける。
いっぱいいっぱい気持ちを込めて。

…………大好きだよ、お父さん。
お父さんの奥さんには負けちゃうけど。

お父さんのお手手はまだ震えていた。
タマさんとミヤタさんはトシコさんが離れると、そのお心を温めるかのように何度も何度もお父さんのお身体にお湯を掛けてあげた。

『…そう聞いてもお前の哀しみや罪の意識は消えないだろう。だが、お内儀にとっては何か起こる度に胸が潰れそうに心配するよりマシだったのかもしれぬ。
…その想いに何故か其奴もそれなりの情けを掛けたのかねぇ。精を抜き去る前にお前たちに言葉を交わす猶予を与えるなんて。』

『……あの最後の笑顔を見られたんは鬼の思いやりか。何も知らずにぬくぬくと生きていた俺への罰やなかったんか？』

『アヤカシは罰など与えないさ。されたことへの代価は与えるが。それがアヤカシの正義なのだよ。』

しばらくするとガヤさんとキタヤマさんが来てくれたからお身体拭いて、待機してたみんなでまた２階に連れて行く。
お父さんは少しスッキリしたお顔になっていたけれど、みんなは何かを察して言葉少なにお父さんを運んで行った。

トシコさんはお手伝いに来たクラタさんにびしょ濡れなのが見つかってる。

『あ〜あ、トシ子ちゃんの服濡らしちゃいましたね…あ、すみませーん。着替えとかありますか？』

ニカさんが出してきたじゃあじはトシコさんにはお袖が長いみたい。

『通訳とやらは要らなかったねぇ？お前の思いは伝わっていたもの。』

でもキツネさんのおかげで、お父さんのお話聞けたんだよ。お口添えありがと。

『……いいや。タマモリはお前の瞳に応えたのだ。』

トシコさんは、余ったお袖をふるんと振りながらお風呂場から出て行った。

で、裸になったタマさんたちとお風呂に入って…僕たちはなんだか何も言えなくて…。

……んと。そうだよね。
考えすぎて放心状態になっちゃうことあるよね。
お父さんに起こったことは僕たちにもあり得ないことじゃない。