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『………いや、これはおじさん寒いし、おじさんの裸をトシ子ちゃんが見つめてるのもどうなの?』
短パンに黒いてぃいしゃつを着てお首にたおるを巻いて、更に肩まで袖をまくった宮田さんが呟いた。
タマさんが2階に僕を呼びに来た間に、ガヤさんやキタヤマさんとお父さんを脱がせてお風呂場に座ってもらったらしいけど。
後から来た僕たちはさておき、お風呂場のドアを開けたままでトシコさんが仁王立ちに立っているのが納得できないそうです。
『いや、ドンブリの通訳要るって言うから。トシ子ちゃんが脱いで一緒に入るのはカオスでしょ?』
タマさんはご自分も袖とずぼんの裾をまくりながら至極真面目に返す。
『それは混沌というかもはや世紀末的な展開だけど。はい、おじさん。お湯掛けます〜。』
『…お願いします。』
しゃわあのお湯をお父さんに掛け始めると、辺りは温かくて湿った湯気でいっぱいになった。
『はっ!トシ…まさかトシ子ちゃんの裸見たいとか…。』
『逆にタマは自分の旦那さんと顔似てる女の子の裸って見てみたい?』
『…トシくんの女装はまた見たい。』
『おじさんの前で何言ってんの??』
タマさんが胸を張って言い切る。
宮田さんの面影色濃いトシ子さんとは言うものの、かねがねタマさんは宮田さんを《美少女》だと思っている節があるので、その比較は割と妥当なのかもしれません。
『タマ、結構ドンブリの言うこと分かるでしょ?時々通訳なしでドンブリと会話してるじゃん。』
そうなの。宮田さんの言う通り!
絶対タマさんって…。
『顔のニュアンスで推測してる。』
『わんこの顔で感情以外の詳細分かるなら、それはもはやテレパスだろ。』
『え?俺そんなことできるの??』
うん。自覚してないだけで通訳能力は開花してきてると思う!
……あれ?お父さんはどうなのかしら。
よし。ちょっと実験〜。
じ〜っとお父さんを見つめて念じてみる。
ささみじゃあきい食べたいささみじゃあきい食べたいささみじゃあきい食べたいささみじゃあきい…
『ドンブリがじいちゃん睨んでる?』
違います!念を送ってるの!!
む〜ん、ささみじゃあきい〜〜〜っ!
『……俺、やっぱりドンブリに嫌われたんかなぁ。』
『んにゃ、それはないわ。嫌いなら風呂に来ない。でも困ってんじゃない?じいちゃんの考えてることが分かんなくて。俺だってさ、じいちゃんのこと見失いそうだもんね。頭からお湯掛けまーす。』
お父さんのお顔びしょびしょ〜。
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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時