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『それにしても、タヌキチ喋れるんだ。最初から喋ってくれたら良かったのに。キツネっちは知らなかったの?』
僕はトシコさんのお膝から飛び降りて、おすわりしてしっぽふりふりでお待ちします。
『なかなか付喪神であんなに流暢に喋れる子は少ないねぇ。声を出す子はいくらかあったが。当人の言う通り、縁起物としてかなり力を尽くしているのだろ。物が声を出すのだもの。』
…ふむ。タヌキチさん、やっぱり努力家なんだなぁ。
『私は話が通じる相手がいたり、憑依することで話せるから、自分の声が相手に必ず届く必要を感じない。だから声を出す稽古などしないがねぇ。
お前もどうしても話したくて仕方ないなら、その鍛錬をするかもしれぬが、しないということはそこまで必要ではないのかもしれぬよ?』
………ぎくっ。
そうなんです〜。話せたら便利なのは分かってるんだけど、代替方法があるから《ま、いっか》と思っちゃう〜。
だってタマさんたちも結構僕の言いたいこと分かってくれるんだもん!
全国の飼い犬の何割かは多分喋れると便利だなぁと思ってるけど、喋れないことで生まれる人間との絆も感じてるんです。きっと。
『わん!』
って、しっぽをパタパタ振るとね?
『あ、ご飯ね?はい、お待ちどうとんぼり。』
おすわりしてる僕の前にらんちょんまっとを敷いて、ご飯を置いてくれたタマさん。
あ、お煮干しいっぱい載ってますぅ〜!!思わずしっぽもぶん回し!
……ね?話さなきゃ分からないこともあるけど、話さずして分かり合えるのってちょっと嬉しい。
僕たちと人間の関係の中で、そういう喜びも実は必要不可欠な要素なの。
ただしここ最近、この《話さなきゃ分からないこと》が多いのは確かかも。
僕も頑張ったら人間と話せるようになるかしらん?
今だって…。
お煮干しをカリカリ食べながら、チラチラお父さんを見ちゃう。
僕が話せたら、お父さんもご自分のことお話してくれたのかな?
さて、そんなこんなである程度のお話し合いと晩ご飯を終え、皆さん順番にお風呂に入っていきます。
まずはタマさんとミヤタさんでお父さんをお風呂に入れて、ガヤさんとキタヤマさんが移動やお身体拭き、センガさんがお風呂後の美容係ですって。
みんなも静かになったお父さんを心配してるみたいだけど、それには触れないの。
触れることはもっとツラいお話をさせなきゃいけないと肌で感じているのかもしれません。
『ドンブリもついでにシャワーしとくかぁ!』
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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月23日 0時