Who? M ページ4
『ほんっとに王子様になる気あるのっ?』
ライブのMC中にタマがちょっとむくれた。
慌てて思いっきり首を縦に振った。
『…な、なりたいよ!いや、なりますっ!!』
『ホントにホントだな?じゃあ、こっちもそのつもりでビシバシ行くからなっ!!』
昨年末の事務所主催カウントダウンライブで事務所が採ったアンケート結果の案件だ。
《カワイイ5人》《元気者5人》などテーマに沿って事務所のタレントの中から選ばれた5人が歌える企画だったのだが、俺たちのグループからは結局どれにも1人も出られなかった。
…で、タマがご立腹だったのは《王子様5人》に俺が全く引っかからず、しかも俺がその結果に納得しちゃっていることらしい。
《宮田を王子様にする》…タマは昔からこう言ってくれる。
勿論分かってた。気付いたらお笑い担当で事務所でも目立たずグループでは後ろのほうだった俺が、アイドルにはなんとかなれたとしても、王子様とやらになれる訳がない。
だけど、俺の母ちゃんが煌一くんガチ勢だったが故に混乱は続く。
《俊くんは煌一くんみたいな王子様になるんだよ》。
王子様になれない俺と、王子様になりたい俺。
その狭間で、とりあえずこの世界で今さえ生き抜けられればいい俺がどっちつかずで彷徨っていた。
俺が王子様になれると、俺よりも信じてくれていたのはタマだけだ。
それから俺のファンのみんな。
だから俺を好きでいてくれて、王子様だと信じてくれる人の為に俺は《王子様》を目指す。
そう決めたのは5年ほど前か…。
………俺は、少しでも《王子様》に近付いてるんだろうか。
しかし、思わぬところでその答えが示された。
お正月明けの番組でのこと。
今までグループとしては絡むことのなかった大先輩…なんと剛志くんと煌一くんが番組にゲストとして出演!
小せぇ時から母ちゃんに教え込まれた《王子様》が俺たちと喋ってる。
それだけでもスゲぇのに、俺の母ちゃんの話題になって…。
『お母様に煌一くんになれて言われたんは嬉しいけど、宮田くんと俺キャラ違うやろ。』
『いやいや、俺からしたら煌一と宮田くんキャラ一緒よ?この中やったら宮田くんやろ。』
剛志くんの言葉にタマの顔がぱあっと輝いた。
『う、嬉しいですね!母ちゃんの夢叶いました!』
『嬉しいねっ!!』
俺とタマ、2人の声が重なった。
えと…まあ、何処が同じキャラなのかは訊けなかったけどね?
《王子様》って、結局どんな人なんだろうなぁ。
fin.
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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月21日 0時