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Why? F ページ8

『あのぅ…ぎょ報告ぎゃありまちゅにゃ…僕、け、けっきょんしみゃっしゅ。』

『…は??』


しーんと静まり返った会議室。
打ち合わせの最初にいきなり渉が立ち上がったかと思うと最高の見事なカミカミでこう言った。
スタッフさんどころかメンバーまでが呆気に取られている。

……ココは俺が通訳するべきか?
いや、こんな重大報告は流石に代われんわ。


頑張れ、渉。
お前に幸せになる権利はあるが、報告をする義務もある。
真摯に自分の人生と向き合って選んだ道なんだから、胸を張れよ。



2年前にしっかり週刊誌の記者に見つかって以来、この日は来るべくして来た。

《中途半端な気持ちじゃありましぇん》

馬鹿正直が過ぎると頭を抱えたが、言っちまったもんは仕方ない。

大切な俺たちのデビュー10周年に撮られた割に、公では大々的に報じられなかったのは、記者もあんまりあっさり対応してくれた上お茶までくれて、逆に《どうしゅればいいんでしゅかね?》なんてカミカミで相談されたから、好意的に書くしかなかったかららしい。

渉は《どうせ俺なんか》と自虐する。
それはアイドルとしてはペシャンコに潰された誇り。
けど、人間としては誇り高く生きる。

……俺はその生き方を羨ましいとさえ思うけれど。


かつての社長が語った言葉がある。

《奨励する訳ではないが適齢期になったら結婚すべき。人として当然のこと。ただ、自分の責任のもとで結婚するわけで、自分を認めながら信じながら、結婚するんじゃないですか》

だけど、渉には自分を認めて信じる為に結婚が必要だったのかもしれない。


まぁ、コレについては流石に何度も何度もみんな話し合ってシミュレーションを重ね、新しい《大人アイドル》の形を考えてきたのよ。
俺たちはメンバーだけのグループじゃないから。
既にファンのみんなとスタッフさんの心を預かっているから。
やがて来るその日の為に、如何に認識の摩擦を少なくするか心砕いてきた。


7人が一緒にいることは、育ててくれたファンの方への恩返し。
そして、俺たち自身がこのグループを大好きだから。

それぞれが幸せならいい。
けれどもそれは7人全員で未来もココにいることが大前提での話だ。



『…俺っ、結婚しまっしゅ!!』

またもや部屋は音を無くした。
渉だけが周りを見回し、真っ赤になっている。


一瞬の後、一斉に湧き起こる拍手。

『おめでとう!横尾さん!!』


……やっぱり俺はこのチームで生きていきたいと思う。


fin.

Which? S→←What? T



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作者名:みあん | 作成日時:2023年1月21日 0時

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