30 ページ47
お部屋に帰るとロバさんヤギさん、モモさんはもういなくなっていて。
キタヤマさんたちがお父さんとトシコさんをテーブルに着かせてご質問責めを始めたところだった。
『…アヤカシの声が聞こえねーと意味分かんなくない?なんか聞けるようになる方法ないの?』
『式神さんってどうやって出会いあるの?募集かける?』
『で、結界て何じゃらホイ!タマとドンブリとトシくんはどうやって…。』
『急転直下の大団円?あんなにしつこかったのに。あの狸は逃して良かったんですか?』
最後のクラタさんのご質問から、トシコさんがお答え始める。
『アレは狸だよ。何処にでもいる子たちの中の1匹だ。だけどその狸が生まれる時、木食行の末に耐え切れず狸を喰ってしまった僧の記憶が入り込んでしまったようだねぇ。
記憶というのはね、新しい時節、新しい命の材料となるのだよ。特に何かを強く愛した記憶は残りやすい。かの記憶は恋焦がれるように仏を…信じる方を追いかけ愛した記憶だったのだろうよ。それがやっと長らく求めていた仏の慈悲を体感できて引っ込んだのだねぇ。』
ヨコオさんが無言で温め直したこおひいとみるくをみんなの前に置いてくれた。
みんなは口々にありがとと会釈してからお口を付けた。
『…美味い。なんか、息詰まってたからちょっとほっとしたわ。』
『《仏の慈悲》って…。』
『人の苦しみは千差万別。だから信ずれば苦しみは取り除かれるという教えは畑違いでも全ての信仰のバックグラウンドに根付くものだねぇ?だが仏の大慈悲は信仰のない者にも与えられるという。あの者にも勿論与えられる。彼自身がそれを慈悲だと信ずるならば。龍は信ずるように暗示を掛けたのだ。マメダの最後の鎧を全て剥ぎ取った上でね。』
『龍……アレはやっぱり龍の記憶が表層に出てきた状態だったの??』
『初めて見た。躊躇いもせずに暴力的なことするトシくん。』
『急に結界も簡単に抜けてったし。』
みんな思い返してゾッとしているみたい。
『…だからアイツ、自分を怖がってたんか。』
『マジでトシくんなら、あのもう1人の自分がすることには抵抗感あるかもね。』
ガヤさんはこおひいのこっぷを両方のお手手で包み込んだ。
『暴走されたら確かに怖い。けれども必要な存在。トシが真正面から向き合っていかないといけない課題なんだ。』
黙っていたヨコオさんがお首を振る。
『トシくんだけに負わせてちゃいけにゃいでしょ?俺たちも一緒に背負わにゃきゃ。』
29人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みあん | 作成日時:2022年11月27日 0時