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今までのマメダさんのお声とは全く違う。
それは地の底から湧き出る沼のあぶくのようなお声だった。
『仏教の修行は、自分の精神を自分で律し管理できるようになることが第一の目的。せやからこそ、その修行を終えたもんは仏の声を聞ける上人として生きながらに仏の如く敬われる。
色々修行はあるが、木食行は山に篭って木の実しか喰うたらあかん修行でな。しかも煮炊きがでけへんさかい、ドングリも渋かったやろ。柿やらアケビやらがある時期はまだええけどなぁ。
……せやけど、あんたは行に失敗した。美味かったか、その狸の肉は。』
《………黙レ。黙レ、黙レ…。》
さざめくようにマメダヌキたちは口々にそう唱える。お経のように。
『１度喰うたらもう止められへんかったやろ。次から次へと獣を喰らったんか。
…構へん。普通に生きとれば動物が動物獲って喰らうのは生きる為や。自分を最後まで律しきれんかったなら、そこまでのこと。
でも。あんさんは木食上人になれんかった挫折の念を狂気までの欲に高めてしもた。…いや、極限状態から一気に解放されてやぶれかぶれやったと言うべきか。
俺はそんなに自分自身を追い込んで何かを成し遂げようとしたことあらへんし、あんたを完全に理解はでけへんけど。
《たま護り》として《たま》を守りきれんかった時のじいちゃんの気持ち考えると、ひとつ間違うたらあんさんみたいになってたかもしれんと思うよ。
…なぁ。あんさんに《たま》のこと吹き込んだんは誰やの？？
解き放たれて自由に煩悩を謳歌しとったあんたに、《たま》を喰うて《強くなれ》と唆してあんたの自由を縛ったんは何処のおひとや？』
真剣勝負だ。
何ひとつお言葉を間違えられない時だ。そう感じた。
《神ヨリ仏ヨリ強クナル方ヨ。オレハ選バレタ！オレハ高ミニ上ルベキ人間ヤッタ。今コソソノ時！
【たま】寄越セ。オ前ノ肉喰ワセ。セヤナイト…コノ男、喰ラウ。》
マメダヌキたちがかあてんを開くようにお身体を除け、窓枠の真ん中に空間を作り出した。
そこには…タマさん！
タマさんはぐったりとそこに倒れている。
僕は矢も盾もたまらず飛び出した。タマさんに向かって。
《ギィィィィィッ！》
マメダヌキが甲高い鳴き声を上げた。
途端に僕の視界が灰色の幕で遮られる。
何？何かに覆われた！？
妙に冷たいそのふやふやとした感触、チクチクする薄いお毛毛…。
《オレハ憶エトル。木食行ニ取リ組ムト決メタ時ノ、死ヲ覚悟スルホドノ信仰ト情熱ヲ。》
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作者名：みあん | 作成日時：2022年11月27日 0時
