ひとくふう荘13 (ページ33)

今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:10,880 hit

16 ページ33

キタヤマさんがお花の檻を見ながら呟く。

『…そうか。誰かは分かんねーけど、誰かの力をタヌキチが使ってる。もしくは誰かがタヌキチの力を使ってるってことか。』

『なるほどそう考えたほうが納得がいくねぇ。どちらにせよ、この酒徳利が力の源なのは間違いない。とにかくアレから場所を離そうかえ。』

トシコさんはそっとトックリに触れた。

『ふむ。不触のまじない？…こんな術を使える者は…。』

『痛くない？』

『痛いよ。今の私は人の身体を使わせてもらっているからねぇ。だが我慢はできる。…ああ、この板からも離れぬのか。』

…そこで、ニカさんがポンっとお手手を打った。
かと思ったら、隅っこに置いてあるおっきなお道具箱の番号式の鍵を開けて、中をガサゴソ漁ってます。

『…板ごと外すか。』
『え？』
『ああ！床の板くり抜いたら早ぇ！』

センガさんまでお手手ポンッ！
タマさんはそれを聞いてあたふたとニカさんに近寄った。

『ちょっ…ま、待って！バルコニー穴空けるの！？？他の方法考えよう？なっ！？』

大家さん、大慌てです。

…てか、こんなとこに穴が空いたら、僕のおひるねすぺえすがなくなっちゃいますっ！！
返す返すも…タ〜ヌ〜キ〜チ〜っ！！！

だけど、ニカさんはお目当ての小型のちぇえんそおを取り出すと、タマさんを見ながら大真面目なお顔で言った。

『大丈夫、板１枚で済みそうだから必ず俺が修復してやる。めんどくさいから修理費も俺が払う。このままだとバルコニーが永遠に使えなくなるぞ？』
『俺も出すよ。永久にあんな顔見ながらあそこでご飯食べることになるでね？』

センガさんは、ちゃっちゃとご自分もノコギリを取り出して、えんぴつでトックリの周囲の床にまあるく円を描いた。

『そりゃヤダ、けど…。』

『俺も修理費出すわ。今はひとり囚われてるんだから、早急にアレをなんとかしないと大事な味方が減る。』

キタヤマさんもちっちゃなノコギリを取り出し、早くも板に当てがってる。

『さぁ、タマ？どうする？？』

追い詰められたタマさんは、きゅうっとお目目瞑って震える拳を振り下ろした。

『〜〜〜〜〜っ！もぉ、やっちゃって！！』

『よっしゃあ！』
『宮っち、まずドリルでノコ入る穴空けて？』
『り、了解。ごめん、タマぁ！』

どぅるるるるギコギコガリガリガリガリ〜っ。
一斉に鳴り始めた音にタマさんは思わずお耳塞いじゃった！

『くそぉぉっ！タヌキチ〜っ！！』

………えと。お気持ちお察しします。