ひとくふう荘13 (ページ26)

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……ハッと息を飲む音が聞こえる。
これはきっとミヤタさん。
僕がそう思ってミヤタさんを見ると、やっぱりタマさんもミヤタさんを心配そうに見てる。

《…言っとくけど、人間に任せてらんねーと思った時点で俺が【たま】喰らうからな？そのほうがよっぽど有益に使えるぜ。》

リュウさんのあのお言葉がまた思い出された。
入り込んだ記憶が、今生きる人物を差し置いて暴走する可能性はやっぱりあるんだ。

けれど、僕はお父さんも心配。
お父さんのお父さんの中の記憶はどんな記憶だったの？
お父さんのお父さんはどんな方？？
…今でもそんなお顔になるくらい、お父さんにはとっても苦しくて哀しかった《愛した記憶》なんだね。
僕、今お膝に乗ってれば、お顔ぺろぺろしてあげられるのに…お父さん。

『…せやからな、むりくり記憶を引っ張り出すんやのうて、できれば自然に…一生出てこんならそれでもええ。それくらいの気持ちでいたほうがええのよ。精霊に協力してもらえるならそのほうがええんやで？
桃さんも言うたように、記憶は記憶やから結局実体に力は及ばん。自然界のエネルギーの使い方を知ってるだけアドバンテージはあるがなぁ。

それに記憶が自然以上の力を使うっちゅうことは、すなわち誰かの力を借りるいうことになる。アヤカシや精霊や神さんや…もしくは自分の入り込んだ人間の命の力を。
俺の親父は記憶に力を使われることで命を縮めた。じいさんが自分の命の力を使わんと記憶を引っ張り出す古代術も知ってたらしいが、突然《たま護り》継ぐことになった俺は知らんままや。』

……その時だった。

『桃さんっ！話してないでコレなんとかして下さい！！』

いつの間にか、ヤギさんが大首のお口をこじ開けようとしていた。

《キンギン、ザイホウ…ボウインボ…ニク…。》

大首は音に散々揺さぶられ殴られたせいか、疲れ切り、既にだらりとお目目を半分閉じているけど、それでもお口は頑なに閉じたまま。
ヤギさんは必死にお口の中に呼びかけている。

『龍馬、帰って来い！！ロバが狸に喰われるなんて間抜けな話もいいとこだぞ！？』

でも、ロバさんのお返事はない。

『白沢、落ち着けよ。かなり弱っているから龍馬を噛み砕く力も残ってなかろうよ。信楽焼の狸…確かにケモノと土と火の匂いがするよ？付喪神にしては高等な技を使うし、闇の力を感じる割には清められんのが不思議だがよぉ。兎にも角にもこの変化の術を解かねばよ。』

桃さんが何歩か前に出た。