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そのお言葉が終わらぬ間に、またもやガラス戸の音がおっきくなる。


…ああ、もぉ割れる…っ。


みんなの息を飲む音がした。
心臓の音が速くなった。

バキッと放射線状に入ったヒビは見る見るうちミキミキと広がって…。


パーンッ!!!


まさに爆発と呼ぶに相応しい割れ方で、ガラス戸は砕け散る!

…お父さん…っ!

思わずお花の檻に入ろうと走り出した僕。
でもバンッと弾き飛ばされ、僕は床に転がった。

『ドンブリ!?』

みんな一斉に僕のお名前を叫ぶ。

『おいで!!訳分からんけど…これはじいちゃんたちの戦いだ。俺たちじゃまだ入れねー!』

ガヤさんが慌てて、そこに転がった僕を素早く抱き上げお花の檻から距離を取った。


ああ、こんなに美しいお花だというのに。
今のそれは鮮烈な強さで僕の侵入を妨げる。

……お父さん。今日は離れないって思ってたのに!お願い、お怪我しないで!!


だけど、ガヤさんの腕の中でお身体を反転させ、再び前を向いた僕は気付いた。
お父さんの傍に立つ桃さんと新たに湧き出た2人の人影と、その前方に現れた窓枠いっぱいの……。

おっきなお顔??!


『……何にゃの、アレ。』

呆然自失といった体でヨコオさんがひとりごちる。
白かったはずの空間の半分を真っ黒なもやもやで埋め尽くし、窓枠をミシミシ鳴らしながらはみ出したお顔がニンマリと笑っていた。

ひと目で分かる特徴は片目がないこと。お顔の左半分くらいが真っ黒に焼け焦げたように見える。
これは女性かしら??
細い弓型の眉の下のおっきなお目目をギョロギョロ回し、突き出たお鼻をひくひくさせて匂いを嗅いでる。つるりとして血の気がなく蒼さ際立つお肌には浮き出た黒い血管。


《キンギンザイホウボウインボウショクシュチニクリン…。》


……ん??この声とお言葉…。

き、聞いたことあります!てか、忘れたくても忘れられない三大煩悩四文字熟語!!

まだいらしたの?だって彼はもう破魔矢でお祓いされてアヤカシとしてはいなくなったはず…?!
しかも人間のお顔になってる〜?


『《金銀財宝暴飲暴食酒池肉林》だとよ。』
『何じゃそら。えらい欲望丸出しなアヤカシやん。』

桃さんが通訳したお言葉に、お父さんも呆れ返る。
こちらの7人もちょっとざわざわ。

『…欲望丸出し?そんな奴に最近会ったような。』
『あれ?金と食と色欲…。』
『あ〜っ。俺、その呪文唱えてた奴に殺されかけた!』


タマさんがポンとお手手を打った。


『…タヌキチ!』

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作者名:みあん | 作成日時:2022年11月27日 0時

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