ひとくふう荘13 (ページ2)

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『ぎゃああーっ！！』

今度はクラタさんのお肩にガブリっ！

い、いや？まさか頸動脈狙いに行きました？？
マズい！ほんとのほんとに緊急事態っ。

『ぅえ？何だ、この修羅場！』

クラタさんの叫び声に、流石のふわふわタマさんもすりっぱも履かず飛び込んできた。

らぐの上に飛び降りたネコタマさんは、更にクラタさんの足に両手両足でしがみつき、その細い牙を突き立てようとする。トシコさんが叫んだ。

『タマっ！ダメぇ！！』

…仕方ない！失礼しますっ。

すんでのところで、僕は前足でネコタマさんのしっぽをばんっと踏み付けた。

『ギャアッ！！』

ご、ごめんねっ？でもこんなことしちゃいけません！！

『……グゥーーーーーーーっ！！』

い、威嚇してます？ヤダ〜っ、タマさんが僕に怒ってるぅぅ…。

《るせーっ！どけ、ノーテンキ！！俺はトシコを泣かせたくねーのっ。人間のオスなんて２度と信用できるか！》

てか、トシコさん以外あなたの周りはほぼ人間のオスしかいませんよ？
とりあえず落ち着いて？タマさん、トシコさんをちゃんと見てっ！ほら！！

《…んあ？》

そうです。あなたは大事なことを忘れてますっ！

僕に言われて振り返ったネコタマさんが一瞬にして凍りつく。

…そこには静かにお目目にお水溜めてこちらを見ているトシコさんが…。

《…トシコ！泣いてるの？》

あたふたしたネコタマさんは、トシコさんの許へ駆け寄った。
でも、トシコさんのお目目からはお水がぽろりん。

『…タマ、どうして？いきなりひとに怪我させるなんて…私の育て方間違ってた？？…タマはそんな子じゃないよね？どうして？』

《トシコ…違うの。だって…クラタがトシコのこと狙ってんの。せっかくトシコの心の傷が癒えてきたのに…俺、トシコを守りたくて。》

クラタさんへの燃え盛る一方的な怒りからトシコさんを泣かせた罪悪感におろおろ。トシコさんによじ登り、お顔を覆っているお手手をぺろぺろ舐める。

トシコさんを泣かせたくないのに、自分が泣かせちゃったら意味ないもんねぇ？

タマさんが救急箱を出してきて、クラタさんの傷を確認しながらトシコさんに呟いた。

『…びっくりしたぁ！でも理由があるでしょ？俺もさぁ、この子はこんなことする奴じゃないと思うよ？』

『イテテ…原因は俺…ですかね？何か匂いが違うとか、ご機嫌損ねることしたのかなぁ？
…はっ！！もしかして何か妖とやらの気配でも！？ど、ドンブリ師匠、俺に何か憑いてない？』