I need you！ (ページ5)

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How？ M ページ5

どうやって、俺はこれを切り抜ければいいのか。

『お前、上履きの臭いがする。』

…客が一気に引いた。

『ちげーわ、アイドルのパフュームだわ！』
『えっ、宮田は上履きの臭いなの？』
『……あ、宮田、ここ剃り残し……』
『あ、雑巾の臭いか！』

焦ったニカが悪口を重ねる。
北ミツまで悪ノリ。
ガヤさんは話題を変えようとしてくれたけど、ニカはその話題をスルーしてしまった。

ニカ、確かに俺は言ったよ？

《話題に困ったら、俺をイジッていいよ。》

だけど、明らかに悪口すぎるのは、そりゃファンも引くから。

あまりの引かれ方に焦ったニカは、他のイジりを全く思いつかないようで、いくら俺が返事しても同じことしか言えなくなった。

やっぱさ、ある程度喋ることとか決めておこうぜ？…焦りすぎ。

俺が面白くねぇのは仕方がない。
笑わせるリズム感がない。面白いフレーズを披露するだけじゃ、笑いにはならないのだ。
今では、それを滑り芸として定着させてしまったから、まだマシだけど。

でもただの悪口を力技で笑いに変えるのは、正直難しい。大体、俺はそんなの面白いと思ったことないし。芸人さんはスゴいよなあ。俺じゃ無理だよ～。

そのとき、もう限界だと判断した北ミツが、タマに話を振った。

『あんなこと言ってますが、どうですか、タマさん？』

タマは事も無げに言い切った。

『俺は全部平気。宮田さんの匂いも汗も。』

おーっと、タマがデレたーーーっ！
ようやく客が沸いたーーーっ！！

『あ、もう慣れましたか？宮田の臭いに。』

北ミツが嬉しそうに俺を見た。ナイスパスしただろ？と言いたげに。

『いや、俺の臭さに慣れたみたいな言い方しないでっ！』

はい、笑い起きたーーー！

心中、小躍りしたくなるほど安堵した。ちらりとタマを見ると、耳は赤いが澄ました顔。

『助けてくれてありがと。』

楽屋でお礼を言うと、タマに肩を抱かれた。

『別に～？』
『いやいや、俺がタマに振ったのが良かったんだろ？』
『いやいや、北ミツはもっと早くあの流れ止めてよ！』
『ごめん！俺がテンパったから～！』
『あー、はいはい。いいよ、ニカ。次は喋ること考えといてね。』

簡易反省会の中、タマはギュッと俺を抱き寄せ、髪の中に鼻を突っ込んでクンクンと嗅ぎながら言った。

『俺は事実を言ったまでだよ？宮田の匂い、大好きだもん。』
『………た、タマ。』

…メンバーが一気に引いた。

ま、これは俺たちが笑いに足掻いていた頃のお話。

fin.