I need you！ (ページ39)

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No Bet. Ⅲ T ページ39

『なんかヤダな～…。』

宮田の声は聞き逃さない俺。
呟くように、でもはっきり言った。

今のはノリで言っただけで～、冗談だっての。
浮気なんぞしてませんよ。
お前だけで手ぇ一杯。俺も忙しいんだから。

『ちょっとだけお願い！がリアル～。』
『あ～、こうやって女の子誘ってるんだ！』

って、言われたからこう返しました。

『あー、普段のやり口。』
『…なんかヤダな～…。』

いや、やってねーわ。やってたら絶対言わねーわ。
てか！これお前によく言ってたヤツだかんな。お前は忘れてるかもしんないけど、昔、一人暮らし始めた頃にめちゃくちゃ言った憶えが。

仕方ない、後でたっぷり宮田に思い出させてやろっと。

だからこの番組苦手なんだって。コイツに浮気を何回疑われたと思ってんの？
そして、俺が疑うことも数え切れねぇっ！

宮田のほうもね、俺が憶えてなかったような俺とのエピや台詞、漫画やアニメの台詞はいいんです。思わず思い出して笑っちゃうけど。

でも、時々、お前まさかの実体験じゃねーだろなってのが紛れ込む。
後は、マイコにやたら接近してたりね。若い時に、浮気疑ったりマイコに嫉妬したりで、痴話喧嘩事件の数々は、大抵この番組のせいだったわ。今じゃ俺は冷静なもんです。宮田の新しい側面見られると悟りを開いたんです。

最近ここで焦ったこと？
あ～、急に他の男連れてきて別れを切り出された時の抜き打ちテストぐらいか。

『……マイコが選んだんだからね？』

《……タマが、選んだんだからね？》

…あれには焦ったな。昔、自分の嫉妬に耐えきれなくなって宮田と別れようとしてしまった俺に、宮田が優しくも冷たく言い放った言葉。
焦ったってより、背筋が寒くなった。

宮田の奥底にいる冷たい奴が、この俺を突き放そうとした。誰よりも一緒にいて、誰よりも固く結び付いていたはずの俺を。
それだけで身の凍る思いがした。

あれは思い知らされた言葉だったから、こんなとこで思いがけず耳にして、またゾッとしたよね～。抜き打ちで咄嗟に出たんだろうけどさ。

ま、２度とあの台詞をプライベートで聞くことはないでしょう。俺も大人になったんです。
ちょっとやそっとで嫉妬もしないし、ましてや別れるなんてとんでもねー。首噛んででも添い遂げてやる。

ん？やっぱり子どもだなってか？
違うの……嫉妬はするけどほどほどになったの！で、背伸びしなくなった！！

だって、素直になれるって、大人ってことなんでしょ？ね？

fin.