I need you！ (ページ26)

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Please Your Bet. Ⅲ M ページ26

地震だ。

夜、身体をぐんと突き動かす揺れに、これは少し大きそうだと感じて、壁に掴まる。
少し長い、しっかりと感じる揺れに棚のフィギュアが何体か倒れて落ちた。
揺れが収まったと同時に不安になる。

タマは大丈夫だろうか？

さっき『寝る』とメールがあったが、テレビを見て更に不安が増す。
携帯を取り電話を掛けてみるが、全くタマが出る気配はなく、留守電に切り替わった。

大丈夫だと思うのに、電話に出ないことが不安を加速させる。重いものが頭に落ちていないか、転倒してはいないか…。

その時、メッセージアプリが着信を知らせる。急ぎ立ち上げて見るとメンバーの安否確認だ。

《俺は大丈夫。みんなは？余震気をつけて！》

手早く返信して、チームの答えを待った。
次々と送られてくる無事の報告。だが、肝心のタマからの返事が来ない。

《俺が確認してくるわ》

矢も盾もたまらず、家を飛び出した。

マンションのエントランスでインターホンを鳴らすが出ない。合鍵を使って中へ入った。
部屋の前でもチャイムを鳴らすが、それでも出ない。もう不安しか無い。

常夜灯のみに照らされた部屋の中、寝室にノックをしてみた。

『……誰？』

裕太だ……良かった。

『俺、俊哉！ごめん、夜中に…。』

怯えさせないように、まず名前を伝えた。とにかく声が聞こえてきただけで足が震えそうだ。

『な、何？びっくりしたっ！』

白いパジャマ。驚いた裕太の顔。
見た途端に泣きそうになった。もう思わず抱き締めた。

『驚かせてごめん。地震があって…裕太だけ連絡取れなくて。』
『ぅえっ？そんなのあった？？全然気付かなかった～！朝早かったからさ、もぉ眠くて。』

俺を抱き留め驚きつつも優しく背中を撫でてくれる。その白い首筋に顔を埋め、温かな体温と匂いを感じてやっと安堵した。

『そんなに酷い揺れだった？』

ベッドに座り裕太が携帯を見て、ありゃと渋い顔になり返信する。

『寝てたって返事しといた～。』
『ん。ごめん、起こしちゃった。』
『んにゃ……心配してくれたんだね。』

今度は俺が抱き締められた。

『こんな可愛い子置いてかないぞ？』
『リアル星に願いを？…絶っ対ヤダ。』
『ま、そうなったら迎えに来るけどね。』

くふりと笑い、口付けられた。

笑う吐息、体温、肌への圧力。

裕太から与えられる柔らかな安心に身を委ねる。

お前を失くすことに、こんなに怯えている俺を憶えていて。
俺からいなくならないで。

心から君に願った。

fin.