I need you！ (ページ17)

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One Pair Ⅱ T ページ17

『また見てたね～。俊くんの顔。』

ワタが揶揄ってきた。見てたっけ？

『女優さんと話してて、照れちゃったからな。』

ミツまでニヤニヤしだした。あの時ミツも背中ポンポンしてくれたけど、俺、そんなに困ってた？

『宮の顔見ると安心するんだよね～？』

テンテン、要らんこと言い出すな。

『宮が困ってても見てるよ？』

ニカまで身を乗り出した。もぉ、やめてくれ。

『俊くんが喋り出すと自動的にそっち向くって条件反射なんじゃないの？パブロフの犬みたいな。』

ガヤ、俺は今子犬だけどパブロフじゃねー。

歌番組からレッスンスタジオへ帰るバスの中、軽やかに笑い出したメンバーたち。居心地が悪い。
俺が出るドラマの主題歌をやらせてもらうから、俺が代表で話しただけじゃん。

とにかく《無》だ。無表情、無表情。
肝心の宮田を振り返ると、何も言わずに困ったように微笑んでいる。

まあ、安心はする。確かに。

昔は見ないように我慢していた。
だって、宮田が『裕太は前を向いてファンに顔を見せてあげなきゃ』て言ってたからさ。
でも今は俺自身が意識して、なるべく前を向くようにしている。
俺がセンターだからね。言わばグループの顔だから。

昔と違うのは、見たい時に振り向くこと。
あんまり我慢しないことにした。全く振り返らないのも、なんか冷たく感じるし。
それに、俺がちゃんと見ててあげなきゃ、滑ったときにまた落ち込んじゃう。

『タマは宮田のお守りだから。誰も笑わなくても、タマさえ笑ってりゃいいんだもんな。』

そう、俺がお守りなの。タマ大明神。

『俊くんがタマのお守りじゃなくて？タマってさ、割と緊張してるじゃん。』

はっ！？してねーしっ？

『スゴいよ。緊張してるのに度胸はある。舞台座長やってただけのことはある。』
『宮っちがタマのしんどさとか怒りとか緊張感とか全部ほぼ１人で受け止めてたもん。』

待て、そうなんだけど。何故分かった、千ちゃん。俺、そんなに分かりやすかった？？？

『そんなことないよ。タマはタマのままだったし、千ちゃんも一緒だったから。ね、タマ。』

やっと宮田が喋った。笑顔。好き。
この顔が好きなの。それだけなの。だから見ていたい。全部記憶に残したい。聞いてるよって伝えたい。
好き。

『ほら、また見てる。お、耳と尻尾生えてきてねーか？』
『パブロフ～。』
『パブロフは学者の名前だけどな。』

………《無》になった俺は本能のまま、真っ赤になった宮田を見てることにした。

fin.