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『私は今、恋の搭乗口にいる!』

だ、誰と誰の…?

『《ツイテるコ・パイ》と《イトオシイCA》…設定も最高ぉ!!やっぱ歳下攻めはきゅんきゅんだぜ〜ぃ!』


……嶺岸さんは自分のキャリーを置き去りにして、小躍りしながら搭乗口の方へと消えていった。

『新人…正々堂々正当な腐女子だったか。』

呆然と見送っていた俺は、若月さんのその呟きに震え上がった。

『え?俺!?俺、カップリングされてるっ??』
『チーフ…見守ってます。』
『いや、見てるだけ?!』
『くわばらくわばら…。』

若月さんもさっさと歩き出したので、残されたキャリーを掴んで慌てて追いかける。


そりゃ可愛いとは思ったけど…恋に至るかどうかはまた別だろ。
流石に今まで男に恋したことないし。
俺も正統派アニヲタなんでBLに差別意識はないつもりだが、今まで好きになったのはやっぱり女子だったし、ソフトえっちぃ女子アニメが好みだもん。
大体、あいつモテるだろ?!
若月さんと嶺岸さんのケースは例外としてだな、絶対彼女が途切れたことないタイプじゃね?あの子が感知してなくても女子が放っておく訳ない。


…いや、ま、まぁいっか。俺のことで仕事にやる気が出てくれたならそれに越したことはないか。

パイロットも大変だけど、CAだって体力的にも精神的にもなかなか辛い。
嶺岸さんは国内線から国際線に来たところだ。国内線の体力的キツさには慣れているだろうが、国際線はまた違う知識を大量に詰め込まなければならない。きっとこれから頭がぱんぱんになるはず。
乗る前に少しは癒しができて良かったのかも。



………だけど、俺はまだ知らなかった。
嶺岸さんの洞察力と直感力が並外れて優れているということを。


俺と粹のフライトは、既にこの時始まっていたのだ。





『お、遼くん、お帰り。どうだった、新人しゃんは?』

帰ってくるとブリーフィングルームで今から乗務するヨコオさんとすれ違った。

『ん〜、まだ短いハワイ線だし元気いっぱいみたい。張り切ってたよ。滞在時間短いから合間に休めないのはしんどいかもな。』
『国内線に比べれば休めるほうだけどにゃ。遼くん、次は?』
『明後日。まだまだ通常通りとはいかないけど、かなり便も増えてきたし、体力つけなきゃね〜。』

コロナ禍で渡航制限が厳しかった頃に比べれば、忙しくなっても便が増えてくれるのはありがたいことだと痛感する。
一時期は、書き込む予定が研修や会議以外ほぼヲタクイベントなんて月もあった。

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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